やる夫は浪速の商人になるようです 第七章
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12973/1395318502/262 名前: ◆8epcM/V4rs[sage] 投稿日:2014/04/12(土) 10:35:20 ID:1v3udkV.0
第七章
さらなる試練
.
263 名前: ◆8epcM/V4rs[sage] 投稿日:2014/04/12(土) 10:35:42 ID:1v3udkV.0
高和の寒天場で作られた寒天は、ダディといく夫が思った通り、その年、高い評価を取った。
オラオラ オラオラ オラオラオラ オラオラオラオラ
オラオラ∧_∧ ∧_∧∧_∧オラオラ
∧_∧ω;;(∩( ∩;;ω),つ);ω∧_∧
( ω;;(とミ∧_il!|∧lll 彡_∧彡つ);;ω)
∧_∧ミ(∩∧_∧彡づ);;∧__∧⊂)オラオラオラ
( ω(と≡⊂( ・ω・ )⊇≡づ);;ω )__ \
(⊂ と=ど(⊂ っ)づ=つ≡⊃) \ )
/ヘ_∧〃∧__i!l|ミヘ_∧ミ_∧ミ∧_∧\オラオラオラ
( ω(と彡(ω;;(し ミJ);;ω )つ);ω)ミ⊃);;ω) )
オラ(っ つ / )( ) \ ⊂)オラオラ
オラ / ) `u-u'.オラ∪ ̄∪オラ`u-u' \オラオラ
,( / ̄∪オラオラ オラオラオラ オラオラオラ∪ ̄\ )
[寒天ください]
∥
∧,,∧ ∩
(`・ω・´)ツ
(つ /
lヽlヽ/ )
(;;: ( / ̄∪,n__n lヽ,,lヽ
, ― 、と # ⌒つ,,,∧ ノ (;;::)ω・)
<<:;;:) ) c(;;:)ω・`ノ|,,ノ| / つと
U( (U_つ ⊂⌒ (´・ω(;;;) ゝ._JJ
し' `J
それまで取り引きのなかった店からも声がかかり、井川屋は前年の悪夢を忘れることが出来た。
.
264 名前: ◆8epcM/V4rs[sage] 投稿日:2014/04/12(土) 10:35:59 ID:1v3udkV.0
翌年の仕入れ用の銭を前払いで高和に渡すこともできた。
_____
/\___/ヽ /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
/'''''' '''''':::::::\ |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
. |(●), 、(●)、.:| |::::::::ゝ \ / |
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::| |::::::( ( >) (<)|
. | ´トェェェイ` .::::::| (@ ::::⌒(__人__)⌒)
\ `ニニ´ .:::::/ | |r┬-| |
,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、 \ `ー'´/
: | '; \_____ ノ.| ヽ i ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
| \/゙(__)\,| i | : | '; \_____ ノ.| ヽ
> ヽ. ハ | || | \/゙(__)\,| i
____ / ̄ ̄\
/⌒ ⌒\ / ヽ、_ \
/ (⌒) (⌒)\ (⌒)(⌒ ) |
/ ::⌒(__人__)⌒::: \ (__人__) |
| |::::::| ,---、 (,`⌒ ´ |
\ `ー' しE | { |,
/ l、E ノ { / \
/ | | ヽ / > 〉
( 丶- 、 ヽ_/ ン ´ /
`ー、_ノ | /
| |
店主も奉公人も漸くひと息つけたのである。
.
265 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:36:21 ID:1v3udkV.0
寒天の荷を下げて、やる夫とやらない夫が並んで天神橋を渡る。
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ⌒)(⌒
( ( ( | (__人__)
. | ノ 商いが上手いこといってると、
| ∩ ノ ⊃
/ / _ノ なんや景色まで違て見えるもんやなあ。
(. \ / ./_ノ. │
\// /___| |
/\「 ̄~//\/___/
[三三三//三三三]
| i i i i i i i i i i i i i |
____
/ \
/ ─ ─\
( ( ( / (⌒) (⌒) \
| (__人__) | せやなあ。
/ ∩ノ ⊃ /
. ( \ / _ノ | |
.\// /__| |
/\「 ̄~//\/___ /
[三三三//三三三]
| i i i i i i i i i i i i i |
.
266 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:36:40 ID:1v3udkV.0
__
/ _ノ\
/ (一)
| (__人)
| l
. | | そういや、やる夫、お前あのあと、
. ヽ ノ
ヽ / ほんまに嬢さんとは逢うてへんのか?
/ ヽ
| |
|. |
____
/ \
/ _ノ ヽへ\
/ ( ―) (―) ヽ ん?
.l .u ⌒(__人__)⌒ |
\ ` ⌒r'.二ヽ< まあ……な。
/ i^Y゙ r─ ゝ、
/ , ヽ._H゙ f゙ニ、|
{ { \`7ー┘!
.
267 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:36:58 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄ \
_,ノ ヽ、,__ \ ほうか……
(●)(● ) |
(_人___) U | せめて私が団子屋を覗いて、嬢さんの様子なんかを
'、 │
<二ニヽ | お前はんに知らせたらええんやろうけど、
./-‐ `i 、 ___,. イ
{/´、 ',┐ \ 知らんとはいえ、嬢さんのことを
しrヽ V ヽ
ヽ、_ ヽ ィ } 化け物呼ばわりしてもうたからなあ
\ \ ノ i
/ ̄ ̄ ヽ
/ ヽ
/ ヽ
| _,.ノ '(ゞ、_| 何や私も、あれ以来、夜見世に
.| ( ー)ヽ ヽ
.ノ| U (___人_\\__ 足向けられんようになってしもうた……
/ | `⌒(⌒_ \
{ .ヽ. し「、 \
{ ト `ヽ. ___´ノ ヽ、 i
.| | | / /
.
268 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:37:17 ID:1v3udkV.0
それ以上、翠星石の話が続くのが辛くて、やる夫は無理に話題を転じる。
∩_
〈〈〈 ヽ
____ 〈⊃ }
/⌒ ⌒\ | |
/( ●) (●)\ ! ! そ、それより、やらない夫、
/ :::::⌒(__人__)⌒:::::\| l
| U |r┬-| | / お前、鈴三屋はんの養子の話、
\ ` ー'´ //
/ __ / 断ったんやて?
(___) /
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ⌒)(⌒)
. | u (__人__)
| |r┬|} なんや、やる夫、
| | | |}
. ヽ `ニ} 知ってたんか。
ヽ ノ
/ く もう、大分と前の話やけどな。
| \
| |ヽ、二⌒)
.
269 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:37:43 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ⌒)(⌒)
| (__人__) .ダン リョン
| ` ⌒´ノ せやけど、あっこの旦那さんもご寮さんも、
,| }
/ ヽ } ちぃとも変わらず接してくれはるんで、
く く ヽ ノ
\ `' く ほっとしてるのや。
ヽ、 |
| |
____
/ \
/ _ノ ヽへ\ 旦那さんや番頭はんがのことが心配なんはわかるけど、
/ ( ―) (―) ヽ
.l ⌒(__人__)⌒ | さすがにもうそろそろ女衆を雇いはるやろ。
\ ` ⌒r'.二ヽ<
/ i^Y゙ r─ ゝ、 遠慮せんと、鈴三屋へ行ってもええのと違うか?
/ , ヽ._H゙ f゙ニ、|
{ { \`7ー┘!
.
270 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:38:00 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄\
/ ヽ、_ \
(⌒)(⌒ ) |
(__人__) u |
| |┬‐| | 違う違う。
| || .| |
(`ー´ / 私が断ったんは、旦那さんへの遠慮と違うで。
ヽ /
〉 〈
| |
| |
___
/ \
/ノ \ u. \ え?
/ (●) (●) \
| (__人__) u. | そうなんか?
\ u.` ⌒´ /
ノ \
/´ ヽ
.
271 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:38:20 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄\
/ _,ノ `⌒
| ( ●) (●)
.| (___人__) お前も知っての通り、私は商いが苦手や。
| ノ
.| | 養子に行ったら、何としても店を大きせなあかんやろ?
人 丿
/⌒ \ __ _ / そら、私には無理や。
/ \
./ 人 ./ ヽ
〈 < / \ \
____
/ ノ \\
/ (●) (●)\
/ ∪ (__人__) \
| ` ⌒´ | いや、無理、いうことは
\ /⌒)⌒)⌒) //⌒)⌒)⌒)
ノ | / / / (⌒) ./ / / ないて思うけど……
/´ | :::::::::::(⌒) ゝ ::::::::::/
| l | ノ / ) /
ヽ ヽ_ヽ /' / /
ヽ __ / / /
.
272 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:38:39 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄\
/ _\
. | r' )|
. | / / | あっこには丁稚が一人居る。
| / _/ |
. | ,(⌒`、 } それを跡取りに育てた方が何ぼか賢いわ。
. ヽ / 7゙\\}
V / ,、ヽ
( <_/ /
i ,r´
| |
____
/ \ ま、まあ
/ ─ ─ \
/ -=・=- -=・=- \ やらない夫らしい、っちゃらしいけど……
| (__人__) U |
\ ` ⌒´ / (言い訳半分、本音半分、ちゅう感じやな……)
.
273 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:38:57 ID:1v3udkV.0
.. ____
/ ― -\
. . / (●) (●) ま、お前はんがそれでええならええわ。
/ (__人__) \
| ` ⌒´ | ほな、この冬もまた、
. \ /
. ノ \ 奥の事を頼んでもええか?
/´ ヽ
__
/ノ ヽ\
/.(○)(○)\
|. u. (__人__) | この冬も?
. | |
| | まさか……まさか、やる夫、
. ヽ ノ
ヽ / お前、また…
/ ヽ
| |
| . |
.
274 名前: ◆8epcM/V4rs[sage] 投稿日:2014/04/12(土) 10:39:12 ID:1v3udkV.0
____
/ \
‐ ─ \
( ( ●) \ うん。
(人__) |
`⌒´ / また、原村へ行く。
`l \
l \
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ○)(○)
. | U (__人__)
| |r┬-| げっ。
. | ι `ー'´}
. ヽ u }
ヽ ノ
/ く
| \
| |ヽ、二⌒)
目を見張ったやらない夫を置いて、やる夫は先へと歩き出した。
.
275 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:39:28 ID:1v3udkV.0
┃
┃
┃
┃
┃
┃
・
・
・
:
:
:
|
|
¦
!
276 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:39:42 ID:1v3udkV.0
その日の夜、やる夫はダディに奥座敷に呼ばれた。
|| | || | | | | | | | \\
_||.._|_______________||.._|_________.| | |______.| | |0 \\
___________________________|| |______.| | l\. |li、
|| |┌┬┬┬┬┬┐|┌┬┬┬┬┬┐|| | | | | | |.|\.\、 |||
|| |├┼┼┼┼┼┤|├┼┼┼┼┼┤|| | | | | | | |\\.\|||
|| |├┼┼┼┼┼┤|├┼┼┼┼┼┤|| | | | | | | |\\\.\
|| |├┼┼┼┼┼┤|├┼┼┼┼┼┤|| | | | | | | | \\\、
|| |├┼┼┼┼┼┤|├┼┼┼┼┼┤|| | | | | | | | \\`
|| |├┼┼┼┼┼┤|├┼┼┼┼┼┤|| | | | | | | | |li `
|| |├┼┼┼┼┼┤|├┼┼┼┼┼┤|| | | | |_ ('υ | | | |||'`
|| |└┴┴┴┴┴┘|└┴┴┴┴┴┘|| | | | | ミ)γ´.| | | |||
|| | !'''''''''''''''''''''''''''''''!|!'''''''''''''''''''''''''''''''! || | | | |___| ̄|_| | | |||
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'、!__|\ l_l..| | | |||
________________ \\ .| | | |||
l\ \. \\、| | |0 |||
ll\\ \ \、| | | |||
~ \\ \ | | | |||
\l二二二二二二二二二二二二二二二二l | | | |||
|.|__| |.|__| '、|_|\ |||
\..\. |||
\.\|||
\.!||
\`
.
277 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:39:57 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:| やる夫、
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
. | ,rエエェ、 .::::::| やらない夫から聞いたんやが、
\ ヽr-rヲ .:::::/
,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、 今年も原村の寒天場へ行く、ちゅうのは
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i | ほんまか?
> ヽ. ハ | ||
____
/ u \
/ / \\
/ し (○) (○) \ へ、へえ……
| ∪ (__人__) J |
\ u `⌒´ /
.
278 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:40:18 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:| そらまた、なんでや? 去年ならいざ知らず、
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
. | u `-=ニ=- ' .::::::| 高和はんのお人柄も、作らはる寒天の質もようわかって、
\ `ニニ´ .u ::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、 買い付けの約束もついたある。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i | お前はんがいく必要はないのと違うか?
> ヽ. ハ | ||
_____
.. /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
.. |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
.. |:::::::::/ ._ノ ヽ ..|
|:::::::〉 ( ○) (○)| 商いのために天場を知るのは大事やが、
. (@ ::::⌒(__人__)⌒)
| u |r┬-| | お前はんの身ぃの入れ用は尋常やない。
\ `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、. 寒天問屋の丁稚の分を越えてますのやで。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
.
279 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:40:47 ID:1v3udkV.0
言われてみればその通りで、やる夫は項垂れた。
____
/ \
/ \ す、すんまへん、
/ _ノ ::::::: ゝ、 \
| (○) (○) u | 旦那さん……
\ (__人__) ,/
/ `⌒´ \
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:| そうしょげんかて宜し。
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
. | ´トェェェイ` .::::::| 私ら何もお前はんを責めてるのと違う。
\ `ニニ´ .:::::/
,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、 ただ、そこまで執着する理由は何か、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i | それを知りたいと思てるんや。
> ヽ. ハ | ||
.
280 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:41:37 ID:1v3udkV.0
___
/ \
/ \ 実は、火事であないなことになる前の日に、
/ \ , , / \
| (ー) (ー) | 翠家の旦那さんと寒天のことで話したんだす。
\ u. (__人__) ,/
ノ ` ⌒´ \ 旦那さんは、もっと腰の強い寒天があれば、
/´ _i⌒i⌒i⌒i┐ ヽ
| l ( l / / / l 料理の幅も広がるやろ、て言うてはりました。
l l ヽ /
____
/ u \
/ \ /\ 何や、それが遺言みたいになってしもうて、
/ し (○) (○) \
| ∪ (__人__) J | 私、気になって気になって……
\ u `⌒´ /
翠星石とのやり取りは敢えて伏せた。
誰かに話すことではない、と思ったからだ。
.
281 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:42:21 ID:1v3udkV.0
その言葉を聞いたダディが唸る。
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:| 何と……
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
. | u `-=ニ=- ' .::::::| ジャギはんは、うちの寒天でもまだ腰が弱い、て
\ `ニニ´ .u ::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、 言うてはったんかいな。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
____
/_ノ ヽ、\ 井川屋の寒天に不満を持ってはったんやおまへん。
/( ●) (●).\
/ (__人__) u. \ ただ、茹でて潰した里芋を
|ni 7 ` ⌒´ . |n
l^l | | l ,/) U l^l.| | /) 寒天で固めることが出来へんか、て
', U ! レ' / . . | U レ'//)
{ 〈 ノ / 苦心してはりました。
..i, ."⊃ rニ /
."'""⌒´ `''""''''
.
282 名前: ◆8epcM/V4rs[sage] 投稿日:2014/04/12(土) 10:43:02 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/ ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
. |(○), 、(○)、 :| そらあかんわ。
| ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|
. |.u (^・^> 。.:::::::| そもそも寒天にできるんのは
\ ゚ ⌒´ u .::::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、 しゃぶしゃぶした汁気のもんを、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i | しっかりと固めることやで。
> ヽ. ハ | ||
_____
/:::::::::::::::::::::::::::.\ やる夫、旦那さんのおっしゃる通りや。
|.::/⌒Y⌒ヽ:::::::::::.|
| ノ \ i:::::::| 寒天は粘りのあるもんが相手やと負けてしまうんや。
|(─) (─ ) 〈::::::|
(⌒(__人__)⌒:::: @) 昔、天場の棟梁が
| |r┬-| u |
\ `ー'´ / 『何ぼ腰の強い寒天でも糊まではよう固めん』て
,-- ゝーー ___/ /ゝ--、
イ / |.!、 _____ / ノ | i てんご言うてたもんや。
| i |,/(__)ヽ/ | l
.
283 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:43:27 ID:1v3udkV.0
____
/ \
/ \ / \
/ (●)i!i!(●) \
| u , (__人__) | その、糊でも固める寒天を
\ .`⌒´ 〆ヽ
/ ヾ_ノ 作りたいんだす!
/rー、 |
/,ノヾ ,> | /
ヽヽ〆| .|
/\___/ヽ
/ ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
. |(○), 、(○)、 :|
| ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|
. |.u (^・^> 。.:::::::| いや、せやから、
\ ゚ ⌒´ u .::::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、 それは無理や、て言うてるのや。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
.
284 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:43:47 ID:1v3udkV.0
____
/ \
/ \
/ _ノ ::::::: ゝ、 \ 無理、なんだすか……
| (○) (○) u |
\ (__人__) ,/
/ `⌒´ \
_____
/.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
|.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
|::::::::ゝ ― ― |
|::::::( ( ●) (●)|
(@ ::::⌒(__人__)⌒) …………
| ` ⌒´ |
\ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ
| \/゙(__)\,| i
俯くやる夫をみて、番頭のいく夫が暫し考え込む。
.
285 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:44:12 ID:1v3udkV.0
_____
/.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
|.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
|::::::::ゝ ─ ─ | 旦那さん、やる夫はジャギはんの供養のために
|::::::( ( ●) (●)|
(@ :::: (__人__) ) 何ぞやってみたいんやと思います。
| ` ⌒´ |
/ ∩ノ ⊃/ どないだすか、一遍、これの思うとおりに
( \/ _ノ| |
.\ “ /__| | やらせてみなはったら。
\/___ /
|ヽ/|_
.\ /
___ |__>
/ヽ、 _ノ\
/ (○) (○)\
/ (___人__) ..\ ば、番頭はん!?
| u ノ ヽ, |
.\ (/⌒ノ´フ ./
. .> . ̄ ̄´ <.
やる夫は、はっと顔を上げていく夫を見た。
.
286 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:44:39 ID:1v3udkV.0
いく夫はやる夫と目を合わせずに言う。
_____
/.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
|.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
|::::::::ゝ ― ― | 私は何もやる夫の肩を持ってるわけやおまへん。
|::::::( ( ●) (●)|
(@ ::::⌒(__人__)⌒) ただ、料理人として寒天を知り尽くし、
| ` ⌒´ |
\ / 琥珀寒を生み出したジャギはんの願うた寒天だす。
,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ 寒天に係わる者として、何とか、と思う一心でおます。
| \/゙(__)\,| i
____
/ \
/ _ノ ヽ、\
/ (○) (O) \ 番頭はん……
| || (__人__) ..|
\ ノi ! |. /
/ し' `⌒´ .ノ
| ./ ./
.
287 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:44:57 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:|
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
. | u `-=ニ=- ' .::::::| お前はんらの気持ちはようわかる。
\ `ニニ´ .u ::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、 けど、やはりそれは問屋の仕事とは違う。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
____
/ \
/ \
/ _ノ ::::::: ゝ、 \ そうだすか……
| (○) (○) u |
\ (__人__) ,/
/ `⌒´ \
.
288 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:46:08 ID:1v3udkV.0
/`ー──一'\
,r(●)(、_, )、(●)\ しかし、や。
. | '"トニニニ┤'` .:::|
|. | .:::| .::::| 高和はんがそうした寒天を作りだすのに、
. | ヽ .::::ノ .::::::::|
\ `ニニ´ ..::::::/ 井川屋として手ぇ貸す、というなら話は別や。
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i 作るのは高和はん、出来たもんは井川屋が引き取る。
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | || それやったら、寒天問屋としての立派な仕事になるわな。
/ ̄ ̄ ̄\
/ / \ \
/ (○) (○) \ えっ……
| (__人__) |
\ ` ⌒´ /
/ \
.
289 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:46:49 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:| +
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::| うん。
. | ´トェェェイ` .::::::| +
\ |,r-r-| .::::/ + 原村へ行きなはれ、やる夫。
,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、. /^)
: | '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(
| \/゙(__)\,| i |´⌒ )二 ト、
___
/ ⌒ ⌒\
/ (○) (○) \ あ、ありがとうさんでございます!
/ ///(__人__)/// \
| u. `Y⌒y'´ | 旦那さん!!
\ ゛ー ′ ,/
/ ー‐ ィ
.
290 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:47:02 ID:1v3udkV.0
┃
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291 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:47:16 ID:1v3udkV.0
その年の冬、原村の寒天場。
。 ::::: * *
::::;;:::: 。 o 。 o ゚ ゚
::::: 。 。 。
゚ . ゚ :: . ゚ :: +
* * ::;;:: ゚ * ::;;:: ゚ ; ;
::: 。 ゚ ::;;;:: ゚ ::;;;:: ` : ` :: :::;
* ::;;;: o + :: :::::
:: , ; ; ::::; ::::: 。 . ゚ ::
. 。 o ゚ . ゚ :: * ::;;:: ゚
。 . * ::;;:: ゚ 。 ゚ ::;;;::
. ゚ :: . 。 ゚ ::;;;:: * ::;;;:
* ::;;:: ゚ ; * ::;;;: ; ; ::::;
゚ ::;;;:: ` :. ; ; ::::; o ゚
o + :: , ; o ゚ . 。
.
292 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:47:39 ID:1v3udkV.0
主の許しを得たやる夫は、寒天づくりに励んでいた。
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
/ ノ \ ヽ
| (●) (●) |
\ (__人__) __,/
/ ` ⌒´ |
/ y / |
/ / | / / |
(⌒,,)~~~~~(⌒,,) .|
/ / |
./ / |
皆が寝静まった深夜、月明かりを頼りに、
よしずの上に天突きで心太を突いて並べる。
.
293 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:48:03 ID:1v3udkV.0
冷え込みはいよいよ厳しく、口から吐き出された息が真っ白になって天に昇っていく。
___
/ \
/ノ \ u. \
/ (●) (●) \ (天突きで突いて麺にしたからというて
| (__人__) u. |
\ u.` ⌒´ / 寒天の腰が強うなるて決まったもんやないけど)
ノ \
/´ ヽ
____
/ \
/ \ / \
/ (●)i!i!(●) \
| u , (__人__) | (けど、細い糸のような寒天やったら
\ .`⌒´ 〆ヽ
/ ヾ_ノ 今までの角寒天となんぞ違うもんになるんやないか……)
/rー、 |
/,ノヾ ,> | /
ヽヽ〆| .|
.
294 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:48:18 ID:1v3udkV.0
__
,.-''";;;;;;;;;;``'ヽ、
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
/;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
,!;;;!゙`''~^~ァrr-'゙`'´''ラヘ;;;!
|;;;| ノリ ミ;;;|
_ゞ;! r─-- 、 rェ----、ミ;リ
!ヘl;|. ぐ世!゙`` ,ィ '"世ン 「ヽ どうしたんだ、やる夫。
!(,ヘ!  ̄'" |:::.`  ̄ ,ドリ
ヾ、! !; ,レソ こんな遅い時間に。
`| ^'='^ ム'′
.ト、. -‐‐ ‐‐- /|
i| \ === ,イ.:|
,イi| ゙、\ ; /リ.:;ト、
`ー─''゙
____
/ \
/ ⌒ ⌒ \
/ (●) (●) \ あ、高和はん。
l ⌒(__人__)⌒ l
\ `⌒´ /
/ \
.
295 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:48:34 ID:1v3udkV.0
高和はやる夫の手元を覗く。
そこには、突きだされたばかりの心太が、きらきらと輝いていた。
__
,.-''";;;;;;;;;;``'ヽ、
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
/;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
,!;;;!゙`''~^~ァrr-'゙`'´''ラヘ;;;!
|;;;| ノリ ミ;;;|
_ゞ;! r─-- 、 ,rェ--- 、ミ;リ
!ヘl;|. ぐ世!゙`` ,ィ '"世ン 「ヽ
!(,ヘ!  ̄'" |:::.`  ̄ ,ドリ こんな時間に天突きか?
ヾ、! !; ,レソ
`| ^'='^ ム'′ ちょっと遅すぎるんじゃないのか?
,rト、 ー- ─-: /|
_../ i| \ === ,イ.:ト、
/ i| ゙、\ ; /リ.:;!:::\、_
゙! ゙、 `ー─''゙:::;:'::::|::::::::::\
゙、 :::/::::::|::::::
.. ____
/ ― -\ へえ。
. . / (●) (●)
/ (__人__) \ けんど、普通の寒天と違うて、
| ` ⌒´ |
. \ / これはすぐ凍ってしまいますよって。
. ノ \
/´ ヽ 今時分から朝までの寒晒しで試してみようかと思て。
.
296 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:48:51 ID:1v3udkV.0
__
,.-''";;;;;;;;;;``'ヽ、
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
/;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
,!;;;! '~ "~ `i||i" '' `ヘ;;;! そうか。
|;;;| ヽ` u ミ;;;|
_ゞ;!,-;;;;;;;"フノ ヾ`;;;ヽ 、ミ;リ 色々と試したい気持ちはわかるがな、
!ヘl;|.,,_==-、く` ,>゙-== 、「ヽ
!(,ヘ!  ̄'" |ミ.' ̄" , ドリ もうじき夜が明けて、天出しが始まる。
ヾ、! !ミ ,レソ
`| ^'='^ ム'′ ちょっとでも横になっておかないと、
. ト、 、,.-‐ 、,, /|
i| \ ' ニ イ.:| 身が持たないぞ。
,イi| ゙、\ ( /リ.:;ト、
ノ :.:i| ゙、 `ー─''゙:::;:'::::::!:::\
____
/ \
/ ⌒ ⌒\ へえ、すんまへん。
/ ( ●) ( ●)ヽ
l ⌒(__人__)⌒ | もう、休むところだす。
\ ` ⌒´ /
/ ヽ
.
297 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:49:05 ID:1v3udkV.0
__
,.-''";;;;;;;;;;``'ヽ、
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
/;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
,!;;;!゙`''~^~ァrr-'゙`'´''ラヘ;;;!
|;;;| ノリ ミ;;;|
_ゞ;! r─-- 、 ,rェ--- 、ミ;リ
!ヘl;| '____` ,ィ '"世ン 「ヽ そうだ、やる夫。
!(,ヘ!  ̄'" |:::.`  ̄ ,ドリ
ヾ、! !; ,レソ 俺も考えたんだがな、
`| ^'='^ ム'′
,rト、 ー_ ‐-‐ァ' /| 次からは草割りから試してみたらどうだ?
_../ i| \ 二" ,イ.:ト、
/ i| ゙、\ ; /リ.:;!:::\、_
゙! ゙、 `ー─''゙:::;:'::::|::::::::::\
゙、 :::/::::::|::::::
`ヽ、 ゙、 ./ .| ,-、、
____
/ ― \
/ (● ) ヘ\
| (⌒ (● ) |
ヘ  ̄`、__) | 草割りから?
ヽ |
, へ、 _/
| ^ヽ
| 1 |
.
298 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:49:21 ID:1v3udkV.0
寒天の原料となる天草だが、実は『天草』と言う名前の海藻があるわけではない。
まくさ、おおぶさ、おにくさ等の原料海藻の総称なのだ。
,、ヘ、 ,,,、-ーー、
__/::::::::::::ヽ、/::::::::::::::::ヘ___
「:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',::::`i、
}::::::::::「:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',:::::',:ヘ
/:::::::::::!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',:::::',::!
/::::::::::/::::::::::::::;ヘ:::::::::,、::::::::::::::::::::',:::ヘヽ オイ!
ノ:::::::::::ノ:::/::/:::::!ヾヽ:/ヘ::::ヽ::::::::::::::}:::::ヽ
/;:/:::::/::::ノ:::i::::::::ミミ∨彡;)::::::〉:::::::::::::::::::::ヘ 海藻のAAが見つかんないからって
{; l:::::(::::::ノ:::::::);::::ノ /:::::/::::::::)::::)::::::ト;:}
{ !::::::)::))::/ )::) ヽ;:)ヘ:く::::(::::::::ハ! 何で僕なんだよ!!
ヾ=/7::!\ (::/ /://ノノ)::):::/
/ゝ((ヾミ三ミゝ′ ヾ((彡三ミ∠ノニヽ “お前ワカメだから別にいいだろ”って
∨ヘ / /`` i i /ノノ
∨ヘ 〈 ノ 、,, し / ノ やかましいわ!!
` ):.、 Fニ二二j /ソ
リヾト、 |::::::::::::::::::! /り
_ヾlヽ L二ニニ┘/iソノ
,,,、r、/<! > __ < :!フヽー、,,,
どの海藻をどのくらいの割合で用いるかによって、寒天の仕上がりが違ってくる。
これを決めるのが『草割り』という作業だった。
.
299 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:49:36 ID:1v3udkV.0
〃 i,
r' ィ=ゝー-、-、、r=‐ヮォ.〈
! :l ,リ|} |. }
. {. | ′ | }
レ-、{∠ニ'==ァ 、==ニゞ< 腰の強さを求めるんだったら、
!∩|.}. '___゙` ./'__` f^|
l(( ゙′` ̄'" f::` ̄' |l.| まくさよりおおぶさを多めにするといいかもな。
. ヽ.ヽ {:. lリ
. }.iーi ^ r' ,' その分、凍らせ方が難しくなるかも知れんが。
!| ヽ. ー===- /
. /} \ ー‐ ,イ
__/ ∥ . ヽ、_!__/:::|\
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
/ ─ ─ ヽ なるほど……
| (●) (●) |
\ ∩(__人/777/
/ (丶_//// \
草割りは寒天作りの要で、初心者の自分がするなど考えもしなかった。
しかし、高和の言う通り、腰の強さを求めるならば、まずそこから始めるべきだった。
.
300 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:49:57 ID:1v3udkV.0
__
,.-''";;;;;;;;;;``'ヽ、
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
/;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
,!;;;!゙`''~^~ァrr-'゙`'´''ラヘ;;;!
|;;;| ノリ ミ;;;|
_ゞ;! ー- ..,,_ ,,.-‐'''' ミ;リ ま、考えてみてくれ。
!ヘl;| ,.=≡=、` ,´ィ,.=≡=、「ヽ
!(,ヘ! '" |:::.` ,ドリ じゃあ、俺は寝るから、
ヾ、! !; ,レソ
`| ^'='^ ム'′ お前もほどほどにしておけよ。
.ト ヽ二二二フ .,イ
i| \ === ,イ.:|
,イi| ゙、\ ; /リ.:;ト、
`ー─''゙
/ ̄ ̄ ̄ \
/ . \
/ _ ノ ヽ、_ \ へえ。
.| (ー) (ー) . |
\ (__人__) . / ありがとうさんだす。
/ `⌒´ ヽ
ヽ、二⌒) (⌒ニノ
やる夫は高和に向かって深々と頭を下げた。
.
301 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:50:16 ID:1v3udkV.0
翌日からやる夫は、まずひとつの海藻だけで寒天を作り、
その海藻の持つ性質を探った。
/:.:.:.:
____ 、 /::.:.:.:.
/ \ _ |:.:.:..:. \
'ミ_'⌒) ノ \ \ //ヽ;.;..:.: ..:.:)
(´ ⌒)( ●) (● )ヽ // て:.:.:__/
| `~ー' (__人__) l〃ヾ. ヽ
\ `⌒´ /'んソl (:.:.:::: _ノ
. 〃⌒ヽ '"ィ´ヽ.//| ..:.:.::_,)
l\ \ // ′ ..: :.::_
│ \ ⌒ ̄ ̄〆⌒,ゝ (_)
| `ー──~ソ"
_-==ニニ二二二ニニ==-_
丨__  ̄ ̄. ̄.::::::. ̄:. ̄ ̄´::」
. `こ三三三三三三三三ラ´
ノノ:::::::::::::::::::::::::::::: ヽ
. //:::::::::::::::::::::::::::::: ',
i i::::::::::::::::::::::::::::: .:.::i
i i::::::::::::::::::::::::: :.::l
どれも単一では寒天として食べられたものではない。
どの海藻をどのくらいの割合で混ぜればよいのか、見当もつかない。
とにかく片っ端から試すしかなかった。
.
302 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:50:34 ID:1v3udkV.0
_-─―─- 、._
,-"´ \
/ ヽ
/ _/::::::\_ヽ
| :::::::::::::: ヽ
l u ( ●)::::::::::( ●)
` 、 (__人_) /
`ー,、_ /
/ `''ー─‐─''"´\
そうするうちに寒天場を閉める春が来て、
すごすごと天満に返すこととなってしまった。
.
303 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:50:48 ID:1v3udkV.0
何の成果も上げられなかったやる夫を、しかし井川屋では誰も責めなかった。
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:|
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
. | ´トェェェイ` .::::::|
\ `ニニ´ .:::::/
,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
_____ / ̄ ̄\
/.:::::::::::::::::::::::::::ヽ / ヽ、_ \
|.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.| (⌒)(⌒ ) |
|::::::::ゝ ― ― | (__人__) |
|::::::( ( ─) (─)| (,`⌒ ´ |
(@ ::::⌒(__人__)⌒) { |,
l^l^ln ` ⌒´ | { / \
ヽ L / ヽ / > 〉
,,.... ゝ ノ_、___ ーノ゙-、 ン ´ /
.i / / '; \_____ ノ.| ヽ | /
l / / \/゙(__)\,| i | |
.
304 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:51:06 ID:1v3udkV.0
それに甘えて、翌冬もやる夫は高和の寒天場にこもった。
草割りに頭を抱えながら挑戦し、そうして作り上げたものを煮沸して固め、天突きで突く。
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
/ ─' `ー \
| (ー) (ー) u. |
\. (__人__) /
/ ,__ __ .__ , ヽ
.| i_ _i
.(__ヨ=======コ___}
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
/ ノ ' ヽ、 \
| (ー) (ー) u |
\ (__人__) /
/ `⌒´ ヽ
ヽ、二⌒)≠ | }
{__}(⌒ニノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
突いたものも、凍ての時間を長くしたり、短くしたり、と
そんな試みと失敗の繰り返しでそのひと冬も無駄に終わってしまった。
.
305 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:51:24 ID:1v3udkV.0
┃
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:
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306 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:51:44 ID:1v3udkV.0
寛政三年、神無月の十日。暁七つに半鐘が鳴り響いた。
カンカンカンカンカン!!
,l ゞ:〃 ______
カンカンカンカンカン!! ,l ゞ:〃 :::::::::::::::::::::::::::::::r" |∥∥∥∥∥
゚゙'ー、,,, ,l ゞ:〃 ,,,r'" l| |∥∥∥∥∥
゚゙'ー、,, ゙゙`ー、, ,,l ゞ:〃:::::::::::::::::::::;r゙゙|::::::::::l|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
゙゙゙゙',ー、,. ゙゙'ー、_ カンカンカンカンカン!! ,l ゞ,.〃 ,r''|::::::|;;;;;;;;;;l|
.ll .゙゙''ー,,, ''ー、,_ _ ,l゙ゞ;〃:::::::::::;;rl|::::::|;;;;;;|::::r''''l| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.ll いら ~~゙lー、、:i┿l| l:ゞ〃 . ,,,r'" l|;;;;;;|::r''|;;;;;;;;;;l|
.ll しゃい lミミl*li温l|ヽi:ー,、 彡~〃彡'"''',,r''' l|::r''|;;;;;;|::::::::::l|
.l:──--、、、...lミミl*il丿l|__li゙゚態N、、 , l l㌍'''"、__r''__,、、l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l| :::::::::::::::::::::::::::::::
, l l l llll|ミミミミミミミlミミl*ll泉l|~~トlー-i゙l~~冫 ~ |゚l、.丿彡彡彡l|::::::|;;;;;;|::::::::::l|
lj,,',,',,',,',,',,',,',,',,',,',,',lミミl*ll丿l| llヾヾiー ゚l゙~i:!』,, l『』i゙゙゚゙:lヽ ̄ ̄l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l| ::::::::::::::::::::::::::::::::
l| l .l lミミl*ll卵l| ll .l il!ヮ ';li,''ll l㌍l゙li....ll ll i~ll"|..| ̄~l|::::::|;;;;;;|::::::::::l|
l| l .l__..lミミl*ll冖l| ll l.ill ̄~~~''゙`゙'''` "l|、l.l |..|____,l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l|
l| l---i .l _,,,,,wil"~l*ll!l!l!l'゙゙“゙~ l| l | l|::::::|;;;;;;|::::::::::l|
l| ,,l,,、、-''~ """ . ゙=゙ヽ|__l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l|
ll゙` .: .. . . . ヽ、 l|::::::|;;;;;;|::::::::::l| :::::::::::::::::::::::::::::::::
. ヽ、|~ヾl::::::|;;;;;;;;;;l|
ヽ、,l~ヾl::::::::::l| :::::::::::::::::::::::::::::::::::
ヽ、 l~ヾ;;;ll________
ヽ、 l~l| ┌───┐
ヽ、l │∥∥∥│
【暁七つ】午前四時
.
307 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:51:59 ID:1v3udkV.0
やる夫が飛び起きて、店の戸を開けて表へ出る。
|┃ ガラッ ____
|┃ 三 /u \
|┃ / \, 、/ \
|┃ / ( ●) (● ) \
|┃ 三 | '" (__人__)"' u |
|┃ \ ` ⌒ ´ /
|┃ /ゝ "` ィ `ヽ.
|┃ 三 / \
,⊆ニ´⌒ ̄ ̄" y r、 ヽ
⊂二、 ,ノ──-‐'´| | l" |
|┠ ' | l/'⌒ヾ
|┃三 | |ヾ___ソ
火は目で確認出来るところには出ていない。
.
308 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:52:13 ID:1v3udkV.0
ほっとしたところへ、ダディといく夫、やらない夫とが揃った。
_____
/.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
/\___/ヽ |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
/'''''' '''''':::::::\ |::::::::/ \::::::::/i:::|
. |(●), 、(●)、.:| |:::::::〉( ●)::( ●).|
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::| .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
. | u `-=ニ=- ' .::::::| | ` ⌒´ |
\ `ニニ´ .u ::/ \ ,/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、 ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i : | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i | | \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | || > ヽ. ハ | ||
__
/ノ ヽ\
/.(○)(○)\
|. u. (__人__) |
. | |
| |
. ヽ ノ
ヽ /
/ ヽ
| |
| . |
.
309 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:52:33 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/ ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
. |(○), 、(○)、 :|
| ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|
. |.u (^・^> 。.:::::::| やる夫、
\ ゚ ⌒´ u .::::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、 火元はどの辺りや。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
____
/ \
/ \ / \
/ (●)i!i!(●) \
| u , (__人__) |
\ .`⌒´ 〆ヽ へえ、見えしまへん。
/ ヾ_ノ
/rー、 |
/,ノヾ ,> | /
ヽヽ〆| .|
.
310 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:52:50 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:|
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
. | u `-=ニ=- ' .::::::| ほうか。
\ `ニニ´ .u ::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、 ほなら、結構遠そうやな。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
_____
.. /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
.. |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
.. |:::::::::/ ._ノ ヽ ..|
|:::::::〉 ( ○) (○)| 大川の向こうやから、
. (@ ::::⌒(__人__)⌒)
| u |r┬-| | まずは大丈夫やと思うんだすが……
\ `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
.
311 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:53:11 ID:1v3udkV.0
火事はこれまで幾度か経験したが、誰もが決して慣れることがない。
_____
/.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
/\___/ヽ |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
/ ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\ |:::::::::/ ._ノ ヽ ..|
. |(○), 、(○)、 :| |:::::::〉 ( ○) (○)|
| ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::| . (@ ::::⌒(__人__)⌒)
. |.u (^・^> 。.:::::::| | u |r┬-| |
\ ゚ ⌒´ u .::::/ ..\ `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、 .....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i | | \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | || > ヽ. ハ | ||
__
/ノ ヽ\
____ /.(○)(○)\
/ u \ ..|. u. (__人__) |
/ \ /\ . | |
/ し (○) (○) \ | |
| ∪ (__人__) J | . ヽ ノ
\ u `⌒´ / ヽ /
/ ヽ
| |
| . |
四人は不安な面持ちで大川の向こうを眺めていた。
.
312 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:53:38 ID:1v3udkV.0
と、その時。
l\ /|
| \ / |
| \ / |
| ──/ |
| | おい、聞いたか。
|__ ___ |
| l_l l__l u| 火元はどうやら堀江らしいで。
| ____ |
\ |/___ ヽ /
> <
/ \
r 、
| \
ー―-、 ____|_ ヽ_
´ `ヽ.
\/ :,
i' -― ‐- i ほうか。それやったら、
l し l
ゝ、 rっ / ここまで火ぃが来ることはなさそうやな。
/⌒ ,.-ー-、___,ノ^)
`⌒ィ 〈
゙ー--、 \
天満橋を渡ってきた町人が話す声が聞こえてきた。
.
313 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:53:59 ID:1v3udkV.0
___
/_ノ ヽ\
/ (○) (○) \
/ u (__人__) \
| |i!i!i!i!| u |
\ u |;;;;;;;;;| / (堀江やて!?)
/ `⌒´ \
(<<<) (>>>)
|、 i、 ,i /
ヽ_/ ヽ__/
| |
それを聞いたやる夫の顔が青ざめる。
.
314 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:54:16 ID:1v3udkV.0
=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=
_r=ァ=、ィfZァ、,、
, ´fフ:´-=_:三ー_ー^ヘ
/ _r//'_ァ'='^ー'`´` ^ー\
/r=、ソィー'7´ ヽ
ハ L/イ| ヽヽ ', ヽ ',
, ソ/ l ハレ´イ{ { { | ', ハ ',
//:/ ノj `´i |ムト、ト、 | } リ i !
ハ:{/イ: { 乂yニミ、ヽ ノ メ ノ/ } !
ヽ._ヽー 、 / // |:. ヽ. { ´ ̄¨` `}イ,ィミxイ / ノ/
 ̄二ニヽヽ/ -ヘ、:.. l:... lト\`' ´ ¨// ./
ヽ、_ _-ァ.:´__::.::.::.:ヽ::\ j:〉..:.l:... l! 、_ __′"/´ | / )
_,._-ニ-ァ‐´ィ二;:-- 、::.::..`ヽ、..:∧:.. lト_、 イ.: j| /{ ノ′ _>  ̄ ` 丶 ___
‐ ´/´ /´ ̄´/::.::.::.::.::..‐.-_、::\:.ヽ:.. l::.::::>ー<l!:.:.|:. リ‐//レ / 「 / /
/′ /-‐ァ::´::, ァ::/.::.: ̄:.`ヽト、.V/::}:ハ:{トヽ/!:. !:/‐'::/ / v / /::\ /
/´ /::.:/ノ/..::..::.::.::.::.::.:..:ヽヽヽ=l:| ト='イ-!: /::;∠ イ_. /、 //::::::::::::::\'__
/´ /イj/イ'/.::.::_.::.::.::.::.::.::.::.::.`トi`j:|__ヽ\ノ人::.::.::∠´ /::::::::\ ', /::::::::::::::::::::::::::::ヽ ⌒ー
/' イ/ // ノ/:.‐..´...::.......ー ::.::.::.::.::.::.:K/:ハ.「jフス::.:.`:くヽ ′::::::::::::ヽ . /::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ__
/// /イ.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.{_j jァzく::.::..::..`ヽ、 |::::::::_,x┼::{ Y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
. ハ::::::ハ::ゝイ:ヽ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
. \:小ヽⅥ::i {::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::
ノ''ノ:::} }::::::::::::::::::::::::\::::::::::::::::
\ ̄! /:::::::::::::::::::::::::::::::\::::::::::
`ゝ .ハ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\::::
ノ , '-‐ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
/ / \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/ /:\\ \:::::::::::::::::::::::::::::::::
=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=
堀江には、翠星石母娘が暮らしている。
.
315 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:54:36 ID:1v3udkV.0
飛び出そうとするやる夫を、やらない夫が背後から抱きついて止める。
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
やる夫、あかん! | u ( ●)(●) ____
. | (__人__) /::::::::: u\
| ` ⌒´ノ/ノ└ \,三_ノ\ ,∩__ 放してんか、やらない夫!
. | /::::::⌒( ●)三(●)\ fつuu
. ヽ |:::::::::::::::::⌒(__人__)⌒ | | | 嬢さんが、嬢さんが!!
ヽ \:::::::::: ` ⌒´ ,/ _ | |
/  ̄\ /⌒ .ヽ i 丿
| ヽ、 \/ /(⌒) ξ) ̄ ̄´
\ ./ / / |
しかし、やる夫はやらない夫を背負ったまま無理矢理にも行こうとする。
.
316 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:55:03 ID:1v3udkV.0
左右からいく夫とダディも縋りつく。
_____
/.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
|.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
|::::::::/ \:三::/i:::|
|:::::::〉( ○)::( ○).|
.(@ ::::::⌒(__人__)⌒) 行ったらあかん!
| u |i|!i|!| |
\ `⌒´ ,/ 死んでまうで!!
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
/\___/ヽ
/ ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
. |(○), 、(○)、 :|
| ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::| 行かさしまへんで、やる夫!
. |.u (^・^> 。.:::::::|
\ ゚ ⌒´ u .::::/ みすみすお前はんを失うような真似、
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i 出来ますかいな!!
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
老いた店主が必死に叫ぶ。
.
317 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:55:19 ID:1v3udkV.0
力で振り切ろうと思えば振り切れる。
; ____;
;/ \;
;/ / \\;
;/ o゚((○) ((○)゚o
;l (__人__) |;
;\ ` ⌒´ /;
;/ ヽ;
しかし、やる夫は苦渋の表情を浮かべたまま、がっくりとその場に座り込んだ。
.
318 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:55:34 ID:1v3udkV.0
そうして、拳で地面を叩いて、声を殺して泣いた。
/ ̄ ̄ ̄ \
/ :::::\:::/\
/ 。<一>:::::<ー>。
| .:::。゚~(__人__)~゚j
\、 ゜i⌒i.⌒´,;/゜
/ ⌒ヽ.ノ ノ'"´(;゚ 。
/ ,_ \ l||l 从\ \
と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.
ベシベシベシ
__
/ノ ヽ\
/.(○)(○)\
|. u. (__人__) |
. | | やる夫……
| |
. ヽ ノ
ヽ /
/ ヽ
| |
| . |
.
319 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:56:01 ID:1v3udkV.0
/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
/ \
/ ´⌒\,, ;、、、/⌒` .\ (嬢さんはなんべん火ぃに襲われればええんや!)
/ \
/. (。o● ) ノヽ ( ●o。) \ (旦那さんもお祖父やんも、家も失くして、
| °o゚゚~'"´ `"~゜o゚;° .l
..|. .( j ) .| 顔に火傷まで負わはったんや!!)
|. `ー-‐'´`ー-‐'′ l
\. |i|!i|!i|!i|!i|i|!l| / (神さんか仏さんか知らんが、もう充分やないか!!)
\ lエエエエエエエl ./
/ヽ イ\ (この上、命までとらな気ぃ済まんのか!!)
/ ``ー- -‐'"´ \
\
泣きながら、拳で地面をたたき続けるやる夫。
.
320 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:56:17 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(○), 、(○)、.:|
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
. | u `-=ニ=- ' .::::::|
\ `ニニ´ .u ::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
_____ __
.. /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ /ノ ヽ\
.. |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.| /.(○)(○)\
.. |:::::::::/ ._ノ ヽ ..| |. u. (__人__) |
|:::::::〉 ( ○) (○)| . | |
. (@ ::::⌒(__人__)⌒) | |
| u |r┬-| | . ヽ ノ .
\ `ー'´ / ヽ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、. / ヽ
: | '; \_____ ノ.| ヽ i | |
| \/゙(__)\,| i | | . |
> ヽ. ハ | ||
三人は言葉もかけられず、ただ呆然と見守るばかりだった。
.
321 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:56:35 ID:1v3udkV.0
炎は堀江と島之内とを焼き尽くし、翌朝、鎮火した。
ィ
__ { ̄ ̄>''"\ //
、 ∠ >''",.. <\\ / ./
.\ > '二,. < L__\\ /^! ., / ./ -‐ 二 ̄
:.\\< }}>-、 廴_____廴_廴__l_ ` 、 / /-==ニ二 ̄≧===
:.\\\ /,イ\\ { ̄ >'"〕 廴 ` 、 } ̄ ̄ ̄二ニ=-< .イ . 'イ>、. \\
.:\\\\/.{_.>、\ >''" ノ〉' 「 ̄}厂 ̄}/〉__r―ヘ'\/〉二.イ ̄ ̄ `T⌒L_/// /〉〉 ̄ ̄
:.\\\\\ / /\>''" ,. <// l_{ //廴〕、 、\〈 ィ7 _辷'二二.. ==-‐''二__./
:.\\\\\\>''" ,. <_,r-// 从/ ./イ {!⌒ヾ=-≦ヾ\二Z二Zニ=-==='⌒! ̄ ̄´ ./
:.\\\\\\\< .////_/⌒!_ //厶イ/}_}_廴,、__,..㌻. イ\\ー---<〉7 .〉  ̄`¨7 ̄/
:.\\\\\\\\ 廴j .// 〉 _/ _// -Ll二ニ=-イ 〉廴___\\-‐'´//`ー-/__/ r/
::\\\\\\\\\二//二/二,、 // ,、 〕、 .L//⌒} > >__//__f<__/_/j
:.\\\\\\\\r一.//Tー'-勹 ^~^? r 、 / `'< 〉// __`ク_/ .// /..:.:/_ノ }L 廴_
:.\\\\\\\\{ .// ,:Lr√二ヽ `^Z」 〈 ._\//'Y >--=ミ// ./.......:/ __厶''"´ ̄
.:\\\\\\\\ゝ//__人 r'^⌒了_r--く`ー' 〈/L之 ∠ -― ´ ̄_ -―
:.\\\\\\\\\\\\\ー-z、_ r―==¬冖ニ二  ̄
.:\\\\\\\\\\\\\\......../ / ,ル'´
のちに「寛政の南の大火」と呼ばれたこの火事は、八十七町、一万三千余世帯を灰にしたのである。
.
322 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:56:51 ID:1v3udkV.0
じりじりと夜明けを待って、翠星石を探しに行こうと店の戸を開けたやる夫は、
戸板に何か細工されているのに気付いた。
|ヽ/|_
.\ /
___ |__>
/ヽ、 _ノ\
/ (○) (○)\
/ (___人__) ..\
| u ノ ヽ, |
.\ (/⌒ノ´フ ./
. .> . ̄ ̄´ <.
.
323 名前: ◆8epcM/V4rs[sage] 投稿日:2014/04/12(土) 10:58:08 ID:1v3udkV.0
見ると、簪を戸板の隙間に差し込み、そこに布のようなものがかけられていた。
,,-ー'''7 ..._,-、_
_ _ - - ___''´ :.: . / .(__ヽノ__)、-,
__ ____∠.. --ーー'' r'⌒) .:.. /.ュ__ゝ_ '、ノ)'、ぅ
__ _,,..-''´ `ヽ __ -ー'''´ ̄ :.:.:.:.:.... ...: . .. /,,__(_ノ.'^’ ̄ ̄(__><_)ゝ'-'
ヽ、_`゙ー'´ :.:.:.:.: ... `゙ー- ,,,, :.:.:.:.... .... ,,-ー'''´ ゝ人ノ|!i、
`゙ー-、 .:.:. . /'⌒)_,,... -ー''¨ </L|_!_l、>
`ヽ、__,,r'⌒ヽ、___/  ̄
煤で汚れ、あちこち焼け焦げてはいたが、若草色の手拭と知れた。
それは、確かな意図を持って、そこに在った。
.
324 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:58:32 ID:1v3udkV.0
=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=
. γ i/ _/ /` - 、 >- 、
. ノ フイ ̄:.:.:.:.:.`:.ヽ、 > i ∠ヾ::... ....::::::::::/
. /'´/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ フ.i 匕 }:::::::::::::::::/
. .//:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.\ 廴::::::::::/
//:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.ヾ:.:.:\:\:.:.:}:.:.:.V ∧::::::∧
∧i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:.:ハ:.:}ヽ:.:.:.\.V:.:.:.:.:.:.V Y´:.:.ハ
. /:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ :.:.:|:.:iⅣi \>:.:ゝミ:.:.:.:.:.:.V }:.:.:.:.:.:}
. {:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:ハ:.:∧レ'´V_ヾ`=-:.:.:.i <:.:.:.:.:.:ハ
. |:.:.:.:.:.:.::i:.:.:.:i:.:i l:.:|´i/ ,行芯ゞ }:.:.\:.:.:.| }:.:.:.:.:.:.:.i
... |:.:.:.ヽ:.:.:V:.:.ハ:.:レ' .i 辷:ソ レ.:.:.:.:.:∧> i <ノ:.:.:.:.:.:.:.ヽ
ト:.:.:.::\:.:ヾ///// '`'´ ノイ:.:i:.:/ { ∧ イ:.:.:.:.:.:.:.:..ト
iハ:.:.:.:.:.:ヽ:\././ // l:/ / {::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ミ\
. ヽ \:.:\:.:\弋' 、 // 人:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ }
ト、:.:ヾ:.:.:≦ト、 - ´ { ノ:.\:\.:.:.:.:.:.:\:.:.ヽ
. // ヾ、_ー ヾ:.>- - -</ T/:.:.:.:.:.ヾ:.:. ̄ヾ:.:.:..::.:.:.:}
. i l }:.:.:.:> }:.:.:.:.:/ / //∧:.:.:.:.:.\:.:.:.:.\:.:.:.:.i
. i/ . /:.:./ /:.::/ イフ::::::://::::::::V:.:.:.:.:.::}:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:ヽ
=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=
刹那、やる夫の脳裏に井川屋を訪ねて来た日の翠星石の姿が浮かんだ。
.
325 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:58:45 ID:1v3udkV.0
___
/_ノ ヽ\
/ (○) (○) \
/ u (__人__) \
| |i!i!i!i!| u |
\ u |;;;;;;;;;| / この手拭いは嬢さんの……!
/ `⌒´ \
(<<<) (>>>)
|、 i、 ,i /
ヽ_/ ヽ__/
| |
.
326 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:58:58 ID:1v3udkV.0
やる夫は駆けだした。
____
―― [] ] / 三\
| l ̄ | | . 三 \ 三/
|_| 匚. | 三 . ( ○) (○)'
| | 三 u (__人__) |
|_| 三 . ` ⌒´ /
[] [] ,- r⌒ヽ rヽ, }
// 三 i/ | ノヽ まだ、近くに居るはずや……!
匚/ 三 三 / )≡
三 三 / /≡
ニ三 ./ /
二≡、__./ /、⌒)
三 \  ̄
三 /\ \
三 /ニ ヽ 三 三
三 / ニ_二__/
三 ./ .
≡ / |
≡ /
三_ノ
.
327 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:59:13 ID:1v3udkV.0
思い立って、天満宮に足を向ける。
_,.-=≦  ̄ ̄ ̄ \ ,.:::::..、
/ // \ 「)::::::::} 、
/ ̄ ̄ \ }、 } {ゞ/⌒:.、
レ≠ミ、 ヽ ___/ /:} /∧:::__/:::::::l
_ヾ`::::::::::::::∧ ∧/、`ュ__/::::/ >:::/\ ::::::::::::}
>::::::::::::::::ミ、, Y::::::::::/、⌒ヽ、 {::::::/ \::::ノ
〃:::::::::::::::ヾ: `ー-―'"::::::::/:::::〉⌒ー'  ̄
´}V{W/´::::::::/::::::::::::::::/::/
ヽ___{::::::::::::::::://
` -、_/
, -―- 、
/: : : : : : : :\
/: : : : : : : : : : : : :、
{: : : : : : : : : : : : : : \
',: \: : : : : : : : : : : : :.\
Vヘ.)>、: : : : : : : : : : : : \
ノ⌒^/ ヽ:ヽ: : : : : : : : : : :ヽ
/´: :_: :{ ',: ',: : : :\: : : :.ヽ:ヽ
j: : : : :_j }: :',',: : : : ヽ: : : :}: |
{: : :ト( 」 ハ_」レ-―'⌒ ーr'
乂ゝ- / /____ , -┐ {⌒!
/`厂 ̄` /:::::::::::::oo}} ⌒) └イ
L{___/__,,.. -‐'  ̄ |
/⌒\ /::::::/::::::o/ ヽ 〉
/⌒ ! .l \:::::::::::o/{ { }
/ ⌒ | ⌒ | } ヽ::/ ヽ ヽ /
| :| | ノ /{ \\ /
境内は罹災者で溢れかえっていた。
.
328 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:59:27 ID:1v3udkV.0
その中に、水銀燈を庇って蹲る翠星石の姿があった。
_,、-‐ ''´ ̄`''―-、,
, ィ'´,ィxXxXxXxXxXxヽ `ヽ、
,ィ'´,ィXxXxXxXxXxXxXxXxヽ、 ヽ
/ /XxXィ'´:  ̄: ̄: ̄`'ヽ、xXxXヽ ヽ、
_/ ./x/:/: : :/: : : : : : : : : ヽxXx!ヽ \
\ /: :./: : :./: : : : :/: /:.l: : : :ヽxXxヽ ./
〉´: : :./: : /: : : : : : /::/: i:.l: : : : :iXxX.i!. /
/:./: : :/: : /: : :/:/: : : /i:.|: : : : :lxXx!.l、/
i:./i!: :/: :.//:/:/: : : : //.l:|!:l: : : :lXxXl∧
|! i!l/!:./:/:./:/: : : : ://‐十ト!l: :.:lXxX.l: :ヘ
|" l l |/: l:/:.////./ | `!: :.lxXx/: : :.ヘ
,ィ'´/xXx |ト、:l: l///././ ゝ=-' ./: /xX./: :|: : :.ヘ
,ィ'´: : :/XxX/riィ!`ー`//// , //lXx.i: : :.l: : : : :`.、
__,、-‐'´: : : :./XxX/ィ´i.`j ` 、 ー /´ |Xx.l:_: : |: : :i: : : :.\
 ̄: : : :/: : : : : lxXxX!..〈 .i.ゝ. ,ィ=≧、-,,≦==, lxXlYj、: |: : :|: : :
: : :__: : : : : :,lXxXxl...イ, i フ 《 ,ィ又ト、 》 ヽX|、ィj、: : :.:l: : ____
.イ´........... ̄ ̄´.lxXxX!....ゝ.i`j ゞ=イ"〃ヾゞ=イ´. \!、ゝ、: : ,...-‐:::::::::::::::::::::::::‐-.....、
............................../XxX!|.....`i i.イ 〃.ィj ゞ、 ヘXx\ ./::::-‐  ̄ ̄ ̄ ‐- 、:::::::ヽ
.........................../XxXx/......ゝ.i 〉 〃イj トj ゞ、 ィェク≠ヽ .//. u l l ヽ::::::`、
......................../xXxXxi....../`j.i.ト、 イj.....トィケ≠イ"......./ .//. l、 l__ . l__/l_ 〉 ト、::lヽ
...................../xXxハXx!./iii ゞクゝヘ_ハイ^"ケ......`´.............././ .l l二二lメヽー‐l`、 7l / l 〇〇ヽ
l l ト l/l ヾヽ、. l V‐レ-、l u l/^` ヽ
l l. l`ヽ-‐ u `、l r'⌒、`l l lヽ ヽ
.l 〉`lV`r'⌒、 !l!lll!! ゝ--' l ノl. l l ヽ
l l`ヽヽゝ.-' u ノ/.l ノノ. ヽ
l l. ヽ\u -‐―‐-、 u.// /::フ、 ヽ
ヾ l、`‐ _ `―一 ´-‐//::::ヽ `v lヽ.ヽ
ヾ_l、lヽ l フ`ニ>' ̄y/::::::::::::ゝ ‐-l 、、`、
`、ニハУ::::::::::〈./::::::::::::__::::〈 >-‐ ' ヾ
l`- .>::::::::::::::::::::::::::::l ヽ:::ヽ l
.
329 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 10:59:47 ID:1v3udkV.0
思わず駆け寄ろうとして、すんでのところで思いとどまる。
____
/ノ ヽ、_\
(⌒ヽ (○)}liil{(○) \
\ \/ (__人__) \
\ | ヽ |!!il|!|!l| / |
\ |ェェェェ| /
(⌒ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ く
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ
\ ヽ γ´ 7
\ `、 ( /
,.-―――― リ、/ /
弋 、_____ノ ` /
\ \ \_ノ
\ \
\ ヽ
\__)
____
/ u, \
/ ─ ─\
/ .u (一) (一) \
| u. (__人__) |
\ `_⌒ ´ /
. ノ / )ヽ く
( \ /__ノi ) , )
. \ ゙ / ヽ ヽ/ /
\_/ \_ノ
そして、本殿に向かって遠くから手を合わせると、天満宮をあとにした。
.
330 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:00:25 ID:1v3udkV.0
帰り道。
生きていることをそういう形で報せに来たひとを想って、やる夫は獣のように声を上げて泣いた。
_
/ ̄ ̄ ̄`\ /´ ̄`ヽ`'ー-、
火事で身内を ./ , ィ /´\ ヽ / ヽ |
| / レ'-' 、_ヽ! ⊂二__Z二|ニ=、!____|__
亡くさはったんや…… | /_V (__)ー(__)| 'ヌ|=ミ.ー╋‐ }三三彡
|ハニ _ 」 "| l 〈_ ,. | ミ5)三
/____ ´┌--, | | r==、_,┐ イ三ミ 気の毒になぁ……
/――`丶、  ̄ / ヽ  ̄ /`\
/ \ / ` ̄ ̄ヽ∠-‐''"´`ヽ
ヽ /_ l
/ `ヽ!j |
/ リ |
_____
/ ノ' ^ヽ_\
゚ / 。;'⌒) (⌒ヽ\°
/ o'゚~(___人___)~o°\゜
| ゚ |/⌒ヽ| ゚ |
\ ` ⌒ ´ /
/` ´\
/ ``"´ ヽ
.| Y Y |
.| | | |
通りすがる人々が、同情の眼差しを向けていた。
.
331 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:00:48 ID:1v3udkV.0
┃
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¦
!
332 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:01:05 ID:1v3udkV.0
翌月。
やはりやる夫は原村へと出かけた。
ニニ ーーーーーニニニニニ从 从
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彡ミミ /\\\\\\\ 爻乂 爻彡ミ 从 彡ミ 从 从
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爻 乂乂乂爻 ll l l l l l l l l l l l |三]l l l l l彡爻爻乂 乂ミ爻爻爻
爻爻乂乂爻爻 ∧ ∧辷二 ≦三三三三三三三二二ニニニニ=
三三三三三≧ (#゚Д゚)―  ̄ ̄
ヽノつつ ∧ ∧, _ r''''
⊂( Y ,,,,,,,,,,, (゚Д゚#)
ヽ) ,,,,_ 彡''''''' ニ と とヽノo
,,, rv┐ ゚ ゚ oY )⊃
,,,o,, 彡 O o r、 (ノ rv┐
''''' rv┐ ゚ 。 oo 8 r┐ o
.
333 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:01:24 ID:1v3udkV.0
草割りは試し尽くして、ある程度の勘が見についた。
__
__ - ´´ ̄ `¨ ‐ 、
, -'"´: 丿 ヽ
/. : : : : _/ 、 丶
,,.'. : : : : / /::::::ヽ l ヽ、
/. : : : : : { {:::::::::ノ ! ヽ
/. : : : : : 丶 ` ´ ノ ヽ
/. : : : : : `ー‐ ´ / ヽ
./. : : : : : !、 人ノ (もう少し……)
/. : : : : : U `i` ニ二-- i
/. : : : : : `´ l (もう少しなんやけど……)
,'. : : : : : : /
i : : : : : : : /
i : : : : : : : /
', : : : : : : : /
', : : : : : : : /
ヽ、: : : : : : . /
ヽ、:_: : : : . /
`¨i : : : : : ヽ
しかし、そのあと少しに手が届かない。
.
334 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:01:43 ID:1v3udkV.0
しかし、諦めるわけにはいかなかった。
=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=
,ィ'´,ィXxXxXxXxXxXxXxXxヽ、 ヽ
/ /XxXィ'´:  ̄: ̄: ̄`'ヽ、xXxXヽ ヽ、
_/ ./x/:/: : :/: : : : : : : : : ヽxXx!ヽ \
\ /: :./: : :./: : : : :/: /:.l: : : :ヽxXxヽ ./
〉´: : :./: : /: : : : : : /::/: i:.l: : : : :iXxX.i!. /
/:./: : :/: : /: : :/:/: : : /i:.|: : : : :lxXx!.l、/
i:./i!: :/: :.//:/:/: : : : //.l:|!:l: : : :lXxXl∧
|! i!l/!:./:/:./:/: : : : ://‐十ト!l: :.:lXxX.l: :ヘ
|" l l |/: l:/:.////./ | `!: :.lxXx/: : :.ヘ
,ィ'´/xXx |ト、:l: l//// ゝ=-' ./: /xX./: :|: : :.ヘ
,ィ'´: : :/XxX/riィ!`ー`/./ , //lXx.i: : :.l: : : : :`.、
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: : :__: : : : : :,lXxXxl...イ, i フ 《 ,ィ又ト、 》 ヽX|、ィj、: : :.:l: : : : : \: :ー-
.イ´........... ̄ ̄´.lxXxX!....ゝ.i`j ゞ=イ"〃ヾゞ=イ´. \!、ゝ、: : :l: : : :: : : :\: :
=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=
ひとり、養母の手を引いて火の中を逃げ惑い、
助かったら助かったで無事を知らせてくれた翠星石。
.
335 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:01:57 ID:1v3udkV.0
____
,. -'"´ `¨ー 、
/ ヽ ヽ、
,,.-'" ,,.-'"` ヽ、
/ `゙`'''゙゙゚ 、_,,.-'' ':'" ヽ、
i 、 .。- = ナ '´ ヽ
./ マ=t7心。 、 '´{イt_ァ 7´,ィ ヽ
/ . 弋 モ_无 `¨¨´ i
/ `¨´ ノ \ l
,' ,' ヽ l (何としても嬢さんとの約束を……!)
i ( i ) /
', `゚''` `゚''ー' ´ /
ヽ、 /
ヽ /
`¨i ヽ
/ ヽ
/ ヽ
.
336 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:02:13 ID:1v3udkV.0
-─‐──‐-、
/ \
/ ; ヽ
l U l
| , 、 ; |⌒´⌒`ヽ、
!、 _ノ" "ヽ、__ ∪ \
ヽ ((●) (●) ):: /⌒゛` l:
/ヽ~゜(__人___)~__ ,ノ| , |
/ /` ⌒ ´ | | , !
/ / | `ー-,,,|" |___,ノ |
/ / | | | ,lー─- 、
, --‐-ー、_/ l ,| | ,/ ) )
く / / ァ- ,ノ \ノ^ノ^/⌒ヽ.j\ /^ー-‐'
`ー' ー´ ̄ (_イ_,イ、_,ィ'´__/  ̄
しかし、やる夫の意気込みを嗤うように、
その冬もやはり思うような寒天を得られぬままに終わってしまったのだった。
.
337 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:02:24 ID:1v3udkV.0
┃
┃
┃
┃
┃
┃
・
・
・
:
:
:
|
|
¦
!
338 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:02:38 ID:1v3udkV.0
翌、寛政四年、弥生。
ヽ,.ゞ:, ヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ; ゞゞノヾゞ:ヾ ヾ yノ ゛ゞ.ヾゞヾゞ; ゞゞゞノヾゞ :ヾヾ゛ゞ.ヾゞヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞ
,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞヽ,.ゞ :,,ヾゞヾ;ゞゞ /ヾゞ ヾゞ:ヾヾ ゛ゞヽ,.ゞ:ゞヾ;ゞゞヾゞ:ヾヾ゛ゞ.ヾゞ;ゞ
ヽ,.ゞ:, ,ヾゞヾ;ゞゞ\ヾゞ: ヾヾ゛ ゞ.ヾゞヾヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞノヾゞ: ヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞ
,.ゞ :,,ヾゞヾ;ゞゞノヾゞ:ヾヾ ゛ゞ.ヾ ゞヾゞ;ゞゞヾ ゞ;ゞ ,
ゞ:ヾゞ゛;ヾ;ゞ ,',;:ゞヾゞ;ゞヾ.: ヾ:ヾゞヾ., .ゞヾゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ ’‘
,,ゞ.ヾ\\ ゞヾ:ゞヾ ノノ ゞヾ . ゞヾ ゞヾ .ゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ
ゞヾ ,,.ゞヾ::ゞヾゞ:ヾ ゞ:.y.ノヾゞ..ヾ .ゞ,'ヾ ゞヾゞ ;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞ;ゞゞヾゞ;
ゞヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞiiiiii;;;;::::: イ.ヾゞ, .,; ゞヾゞ___// ;ゞ ゞヾゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ
ゞヾ ゞ;ゞ iiiiii;;;;;::::: :)_/ヽ,.ゞ:,,ヾゞヾゞ__;::/ ゞヾゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ ,
ゞヾゞ;ゞ iiiiii;;;;::::: :|;:/ ヾ;ゞゞ;ゞ ヾゞ , ’‘
ヾ;ゞゞヾ;ゞゞ |iiiiii;;;;::: : |:/ ヾゞ ’, , ’‘ ,‘
ヾ[ニニエニ|iiiii;;;;;::::: ::|エニニエニニエニニエニニエニニエニニエニニエニニエニニエニニエニニ]
, | ,|i;iiiiiii;;;;;;::: :|. ` | , | |~~~~|
, | |ii,iiiiiii;;;;;;::: ::| ` | , () | | | た゛|
’‘ | ,|iiii;iiii;;;;:;_ _: :| | ∧_∧ .() | . , ’ | | ん |
| |iiiiiii;;;;;;((●)::|. | ( ´∀`) .()...| ’‘ | | ご.|
| |iiiiiiii;;ii;;;;;;~~~:|` | ( つ旦~つ┃ | ∧ ∧ | |,.,.,.,.|
| |iiiiii;iii;;;;i;;:: :: ::| ` | ( 、 ^ヽ ^ヽ ミ ゚Д゚彡..| |,|
| |iii;;iiiii;::;:;;;;::: :::| | ⊂ニニ(__)_)ニニ⊃ ミ ミ......| |,|
,,.,.. ,..M|M|iMiiii;;ii:i;;:;i:i;;:;ヘヘ|゙゙゙゙゙゙゙゙゙||゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙||゙゙゙゙゙゙ヽミ___ミ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙
wwjijiwji ww .jjvwi\ wxjji jw wwjj wj jiij w j i jjw www jiw wwwjiwji ijiwiji wji wij wiji wijiwjiwijj iiwji
やる夫は二十四になっていた。
.
339 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:02:56 ID:1v3udkV.0
____
/ \
/ \
/ _ノ ::::::: ゝ、 \ …………
| (○) (○) u |
\ (__人__) ,/
/ `⌒´ \
/ ̄ ̄ \
_,ノ ヽ、,__ \
(●)(● ) | 頼むさかい、そう辛気臭い顔せんでくれや、やる夫。
(_人___) U |
'、 │ せっかく旦那さんのお赦しをもろて桜を愛でに来たかて、
<二ニヽ |
./-‐ `i 、 ___,. イ そう何遍も何遍も溜息ばっかりつかれたら、
{/´、 ',┐ \
しrヽ V ヽ こっちもたまらんで。
ヽ、_ ヽ ィ }
\ \ ノ i
.
340 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:03:18 ID:1v3udkV.0
___
/ \
/ノ \ u. \
/ (●) (●) \ 溜め息?
| (__人__) u. |
\ u.` ⌒´ / ついてたか?
ノ \
/´ ヽ
/ ̄ ̄ ヽ
/ ヽ
/ ヽ
| _,.ノ '(ゞ、_|
.| ( ー)ヽ ヽ 気付いてへんのかい……
.ノ| U (___人_\\__
/ | `⌒(⌒_ \
{ .ヽ. し「、 \
{ ト `ヽ. ___´ノ ヽ、 i
.| | | / /
.
341 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:03:36 ID:1v3udkV.0
大川両岸の桜が競うように咲き誇り、対岸の桜宮は花見客で賑わっている。
"ヾ;" ; ヾ ;"ヾ ; ;ヾ ;ヾ;" ";ヾ ;" /ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ";; ;ヾ ;ヾ" ;;
"" ;ヾ ;";"ヾ;";ヾ ;ヾ__ ;;"ヾ ;ヾ; " ;ヾヾ "// ;ヾ ";ヾ ; ;ヾ ;ヾ ;ヾ ; ヾ
;"ヾヾ;"ヾ ;ヾ;"ヾ;;"ヾ;\\ ;"ヾ ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾヾ ";ヾ" "; ;ヾ" ; ;;ヾ"
""" "ヾ ;ヾ ;" ;";ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ; ;"ヾ ;ヾ; " ;;ヾ 〃";ヾ ;ヾ" ;ヾ ;ヾ ";;ヾδヾ ;""
" " " "ヾ ;ヾ ;ヾ;" ;;" ;"ヾ __ ;;" ";ヾ ;ヾ ;"ヾ ; ;ヾ ;ヾ" ; / "; ;ヾ ; ;ヾ ;"∧ ∧ δ
" ;ヾ ;ヾ ;";ヾ ;ヾ ;" ";ヾ ;" ;ヾ ;ヾ 〃 ";ヾヾ ;ヾ " " ; ; ; ;ヾ ;ヾ"; (,,゚∀゚)
"ヾ ; " ;;"ヾ;"〃 ";ヾ ;ヾ ;ヾ ; ;ヾ" ;ヾ" ;ヾ ;ヾ ;;ヾ ;../ ;ヾ ;" ;ヾ ;;ヾ ;ヾ"/∪∪
";ヾ ;ヾ ;;"ヾ ;ヾ;"ヾ; " ;ヾ ;ヾ;_" ; ;";ヾ ;;"ヾ ; ;"// ;ヾヾ ;ヾ ";"; ;;"ヾ ; ノ
" ヾ ;ヾ ヾヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;";ヾ ;ヾ ;"ヾ ; ;" ; ヾ 〃";ヾ ;" ";. ; ;ヾ ;ヾ ;"
;"";""; " " ;_; " "; ;"ヾ ;ヾ ;ヾ;" "ヾ;" i i l ";ヾ ;;ヾ ;;" "ヾ; ;";ヾ ;;"
";ヾ ;ヾ ; "; " ;ヾ ;ヾ;_" ; ;ヾ|i l l i|/"/゙ " " " ヾ "
" ;ヾ ヾ ;" " ;ヾ ;ヾ; " ヾ|ll l | |゛l|/" " "
∧ ∧ ヾ;"ヾ゛. || | ll | .|∧ ∧ ∧ ∧ "
ミ,,・∀・ミ "∧i∧ .| l | ゛ | 彡 ' ー'ミ " ヽWノ (,,゚ω゚)ノ シ¶
"~(___ノ (*・ω・) . ||| | ゛|U U (‘д‘) ( ) " ∧⌒∧
,,,,,[|||||||||||||] " ( つ旦o,,,,,, || | ゛ | l |、 ,,,,,, ./ |, U U,,,,,ノ ( ゚ Д゚ ),,,,
,,, ヾ Дメ ___∪ ∪ ∩ ノノ∩人 ヾ、 ヽ、 (___ノ ∧∧ ,,,§(|****|)
//(| y旦o ~⊂ ̄ ̄ ( _Д_)⊃ ∧∧ ゛/ ,,, (・ο・) ,,,, //****)
/ .~|. |. [||||||||||||] .∧∧ ̄./∨∨ ,,,,,[゚ω゚*] ,,,, ~(,,uuノ,,,∧∧∪ ∪,,,,
∧ル∧∪ ∪ @#・∀・@.¶( ゚Д゚) / シ¶ 旦ノ[#ノ ] ~′ ̄ ̄(,,゚Д゚)
( ゚Д゚)___∧ ∧___ ゝ|し |┐ ∧⌒∧ ,,,<ω< Λ Λ,,,, UU ̄ ̄ U U,,,, ,,,,
(つ[[(0]) (,,`Д´) (_|./ |┘ノミ ゚ Д゚ 彡 ,,, /Ψノノハ% ,,,, ,,,,
| | /ハ ∵|つ┓ U U §(|%%%%|) ,,, ノ§・∀・)ζ,,,,,,,,,,,,∧,,∧
∪∪ ,,,,, ヽ(∪旦,,). ┃ ,,,, //****),, ~(___ノ,,,,,,,,,,,,,つミ-Д-ミつ ZZZZZzzzzzzzz
,,,, ∪ ∪ ,,,, ,,,, ,,,,
三味線の音や唄がこちら岸にも流れてきていた。
.
342 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:03:53 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( 一)(●)
| (__人__)
| `⌒´ノ 周りをよう見てみぃ。
| ,.<))/´二⊃
ヽ / / '‐、ニ⊃ この世は春の盛りやで。
ヽ、l ´ヽ〉
,-/ __人〉 いつまでも出来もせん寒天のことで
/ ./. / \
| / / i \ 悩む必要は無いのと違うか?
|" / | > )
ヽ/ とヽ /
| そ ノ
_-─―─- 、._
,-"´ \
/ ヽ
/ _/::::::\_ヽ
| :::::::::::::: ヽ …………
l u ( ●)::::::::::( ●)
` 、 (__人_) /
`ー,、_ /
/ `''ー─‐─''"´\
やる夫は唇を噛んで黙り込んだ。
.
343 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:04:14 ID:1v3udkV.0
二十歳の冬から始めて、四度の冬を棒に振っていた。
____
/ \ (火事を生き延びた嬢さんの為に
/ \
/ \ どないしても、と思うてはみたけど、
| _, / |
\(ー⊂ヽ、∩ u ノ 結局この冬も納得できるようなもんは
| | ゝ_ \ / )
| |__\ ” /. ひとつも出来へんかった……)
\ ___ \ /
ことに、この度の失敗はやる夫にも心底応えていた。
.
344 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:04:36 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
./ ヽ
.l l
l l
.l l 翠家の嬢さんも、今は元通りに
ヽ l
ヽ l 順慶町の夜見世で団子を商うてはる。
.) __,,../
/===、_〈 そこそこ評判をとってるし、
/ \
/ ヽ 母娘二人食べていくのに
.i 、 . l
.l i l l そう窮屈な思いもせんで済むやろ。
l .l l l
l l . l l もう、お前が昔を引き摺る必要も
l l . l l
l .l 、 .ヽ ないのと違うか?
ヽ .l ヽ ヽ
ヾ、__ ___ヽ_, ')
l_ ̄_ ̄ ̄__ __ .ヽ_ノ
l l l l l
やらない夫がやる夫と目を合わせずに言う。
.
345 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:04:51 ID:1v3udkV.0
__
__ - ´´ ̄ `¨ ‐ 、
, -'"´: 丿 ヽ
/. : : : : _/ 、 丶
,,.'. : : : : / /::::::ヽ l ヽ、
/. : : : : : { {:::::::::ノ ! ヽ
/. : : : : : 丶 ` ´ ノ ヽ
/. : : : : : `ー‐ ´ / ヽ
./. : : : : : !、 人ノ (やらない夫の言う通りかもしれん……)
/. : : : : : U `i` ニ二-- i
/. : : : : : `´ l
,'. : : : : : : /
i : : : : : : : /
i : : : : : : : /
', : : : : : : : /
', : : : : : : : /
ヽ、: : : : : : . /
ヽ、:_: : : : . /
`¨i : : : : : ヽ
やる夫は天を仰いだ。
.
346 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:05:05 ID:1v3udkV.0
/`ー──一'\
,r(●)(、_, )、(●)\
. | '"トニニニ┤'` .:::|
|. | .:::| .::::|
. | ヽ .::::ノ .::::::::|
\ `ニニ´ ..::::::/ _____
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、 /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
: | '; \_____ ノ.| ヽ i |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
| \/゙(__)\,| i | |::::::::ゝ \ / |
> ヽ. ハ | || |::::::( ( >) (<)|
(@ ::::⌒(__人__)⌒)
| |r┬-| |
\ `ー'´/
,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ
| \/゙(__)\,| i
高和の作る寒天は評判も良く、
井川屋の商いを安定したものにしてくれていた。
.
347 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:05:29 ID:1v3udkV.0
/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
/ \
/ ___ノ'′ ゙ヽ、___ \ (結局、私には
/ .'⌒` ´⌒ヽ.. \
/. (==) ノヽ (==) \ 翠家の旦那さんの望む寒天を
| U ´"''" , "''"´ l
..|. "⌒( j )⌒゙ | 作り上げるだけの知恵も才覚も
|. `ー-‐'´`ー-‐'′ l
. \. ` ⌒ ´ U / 無かった、ちゅうことや……)
\ /
/ヽ イ\
/ ``ー- -‐'"´ \
\
/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
/ \
/ \
/ \
/. ―― 、 , 、―― \
| l
..|. U (==) ノヽ (==) | (それやったら、本来の商いに
|. ´"''", "''"´ l
. \. ( j ) / 専念するべきなんかも知れん……)
\ `ー-‐'´`ー-‐'′ /
/ヽ イ\
/ ``ー- -‐'"´ \
\
.
348 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:05:49 ID:1v3udkV.0
やる夫は視線を自分の両手に落とす。
冬の寒天場での作業が染み付いて、手の皮は途方もなく分厚く、指も節くれ立っている。
_, - 、_
ィ='´ r‐‐、 `¨¨¨ ー-、
乂 ,ィ、 ヽ, ヽ.
,ィ'/´>‐ '/.i `ー ' ヾ、ノ ヘ
ゝ.ィ´ !ーヽ `ヽ. ヘ
,ィ'´ ̄ 、 {-= ヽ. -‐ i ヘ
,ィ' `ヽ、i `ヽ i、_ ヽ.
,ィ' 、 ,' |'ヽ ヘ _ \
∨ `ヽ,ィ' i i. ヘ, __ ヽ.
. i ―冫' i .i ヽ'´ /
! '´ i V ヽ /
i ! i ! ,'
∨ ,' ,
∨ , ,
∨ , /
| ! ,'
. l / /
∨ ,' /
i ! i .|
! | ヽ!
/ ヽ. ヽ
,' ノ´ヽ ヽ
/ / ∨ ヽ
/ / .∨ ヽ
しかし、この手で何ひとつ得られなかった。
.
349 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:06:03 ID:1v3udkV.0
__
__ - ´´ ̄ `¨ ‐ 、
, -'"´: 丿 ヽ
/. : : : : _/ 、 丶
,,.'. : : : : / /::::::ヽ l ヽ、
/. : : : : : { {:::::::::ノ ! ヽ
/. : : : : : 丶 ` ´ ノ ヽ
/. : : : : : `ー‐ ´ / ヽ (嬢さんとの約束を反古にするんは辛いけど、
./. : : : : : !、 人ノ
/. : : : : : U `i` ニ二-- i 私にその力が無かったことを
/. : : : : : `´ l
,'. : : : : : : / わかってもらうしかあらへんなあ……)
i : : : : : : : /
i : : : : : : : /
', : : : : : : : /
', : : : : : : : /
ヽ、: : : : : : . /
ヽ、:_: : : : . /
`¨i : : : : : ヽ
認めたくはなかった。
しかし、認めるしかなかった。
.
350 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:06:18 ID:1v3udkV.0
____
/ \
/ \ もう……
/ _ノ ::::::: ゝ、 \
| (○) (○) u | 原村に行くんは止めるわ……
\ (__人__) ,/
/ `⌒´ \
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
/ ヽ
| |
| |
| l …………
| /
| 〃/
\、__ (
_)_ ===\
/ \
/ ヽ
| , i
| | l.|
| l | |
やる夫のかすかな声は、やらない夫には届かなかったようだった。
.
351 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:06:30 ID:1v3udkV.0
┃
┃
┃
┃
┃
┃
・
・
・
:
:
:
|
|
¦
!
352 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:06:51 ID:1v3udkV.0
寛政は天災が少なきように、という庶民の願いをよそに、その年の卯月一日、雲仙岳が大噴火を起こした。
γ ⌒ ⌒ `ヘ
イ,,,, "" ⌒ ヾ ヾ
/゛゛゛( ⌒ . . ,, ヽ,,'' ..ノ )ヽ
( 、、 、 ’'', . . ノ ヾ )
.................ゞ (. . .,,,゛゛゛゛ノ. .ノ ) ,,.ノ........... ........
:::::::::::::::::::::( ノ( ^ゝ、、ゝ..,,,,, ,'ソノ ) .ソ::::::::::::::.......::::::
_ _ _::::::::::.:::::(、;''Y ,,ノ.ノ ,,,^ ^,,,;;;ノ)::::::::::::..:::::::::
「_ <>'> 「_ <>'>「_ <>'>::::::::::.('''yノ (''、,,,ノ)ノ ::::::::::,,,,,::,,:::::
_l l _l l _l l <> <> <>( ,,,人、..ツ. ノ ) ::::.:::::
「___」 「___」 「___」,,,,, . . .:::::::::::::'''(, イ")'"´ノ;; :::::
. . . . . . ,,,. . ,,,::::::( , ゛゛..(’_''/,,, ..ノ
. . . ,, . . ((,⌒ノ,,,.:::::' ( (’''....ノ ソ ::::::: ... . . ,,,,,,,,,::::::::::::
. . (’’,,,/(~~ノ(’''''ソ:.:.,、,,,,,(__/:::::::::::::::::,.;ゝ.
y(、,,'''ノ(、、...,,,Y),,,ノ:::.:)~~ /:::::::_,.-‐''~ ,、人
::::::::::: .(’’,,,/(~~ノ(’''''ソ /:,.;‐''~ ,.ィ‐'~ |~`―-
y(、,,'''ノ(、/ \~~~``ー--ゥ'~ ,.;;-‐''~~ |, :-| |
ミ彡 /::::::::`> ,.-''~.‐'~~-‐''~~.| .| | |
工___ ミミ|彡ム-''~~ーv'~ ~:::::;;;:: i-‐i |~~| | |
\===| ミ-‐''~:::::_,.ィ''~~|~ ~~`|~ |T | |~I.| | |
\==|======i__ ミ>,-|~~`i'~I | | | | | |_,.+‐ !┴!―--'
島原大変肥後迷惑、と呼ばれたこの大災害は、一万五千人を超える死者を出した。
.
353 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:07:07 ID:1v3udkV.0
:.: :.: . . . . . . . . . . .
_:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.: . . . . . . . .
: .  ̄ ̄Λ_Λ──______:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:.i ̄ ̄i:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
:::::::::: /:彡ミ゛ヽ;)ー、::::::::: Λ_Λ. .  ̄ ̄ ̄ ̄─‐. ⊂ニニ⊃ ______:. :.:. :.:. :.:. :.: Λ_Λ:.: :.: :. :. :.
::::::.../ :::/:: ヽ、ヽ、 ::i:::::....(-д-::: )ー、::::::....... ( ゚д゚ )ー、 Λ_Λ:: .. . ̄ ̄ ̄─(-д-::: )ー、::..
::. . / :::/;;: ヽ ヽ ::l::: . /i ;: :::i:::.::::::..... . /i ;: ::. i /:彡ミ゛ヽ;)ー、:::::::... . /i ;: :::i::..
: . (_,ノ⌒\;; ヽ、_ノ:l: . (:: ;;__/ :::./ |:::::...... (:: ;;__/ :::./::/ :::/:: ヽ、ヽ、 ::i::::.... . (:: ;;__/ :::./ |:: .
i⌒\)i⌒\ /:: .. / ____/ :|:::::::::.... . . / ____/::/ :::/;;: ヽ ヽ ::l:::::...... / ____/ :|::..
| :::| ::;;_| :::| ::;;ノ: . i⌒i_ノ :i⌒\ /::::::...... . i⌒i_ノ :i⌒\(_,ノ⌒\;; ヽ、_ノ:l::::... i⌒i_ノ :i⌒\ /::..
| :::| | :::|:::: .... | :::| ::;;_| :::| ::;;ノ::::::::::... .. | :::| ::;;_| :::| ::;;ノ i⌒\)i⌒\ /:::::::.... | :::| ::;;_| :::| ::;;ノ::::...
(___/ (___/::..... | :::| | :::|:::::..... . | :::| | :::|:: . | :::| ::;;_| :::| ::;;ノ::::::.... . | :::| | :::|:::: ::...
(___/ (___/:::.... .. .. . (___/ (___/:: : | :::| | :::|:::::::.... . (___/ (___/:::.... ..
(___/ (___/:::.....
九年前の浅間山の噴火、それに続く飢饉、という記憶が蘇って、人々の気持ちを暗くする。
.
354 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:07:26 ID:1v3udkV.0
そして翌月の皐月十六日、ことはまさに天満で起きたのである。
カンカンカンカンカン!!
,l ゞ:〃 ______
カンカンカンカンカン!! ,l ゞ:〃 :::::::::::::::::::::::::::::::r" |∥∥∥∥∥
゚゙'ー、,,, ,l ゞ:〃 ,,,r'" l| |∥∥∥∥∥
゚゙'ー、,, ゙゙`ー、, ,,l ゞ:〃:::::::::::::::::::::;r゙゙|::::::::::l|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
゙゙゙゙',ー、,. ゙゙'ー、_ カンカンカンカンカン!! ,l ゞ,.〃 ,r''|::::::|;;;;;;;;;;l|
.ll .゙゙''ー,,, ''ー、,_ _ ,l゙ゞ;〃:::::::::::;;rl|::::::|;;;;;;|::::r''''l| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.ll いら ~~゙lー、、:i┿l| l:ゞ〃 . ,,,r'" l|;;;;;;|::r''|;;;;;;;;;;l|
.ll しゃい lミミl*li温l|ヽi:ー,、 彡~〃彡'"''',,r''' l|::r''|;;;;;;|::::::::::l|
.l:──--、、、...lミミl*il丿l|__li゙゚態N、、 , l l㌍'''"、__r''__,、、l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l| :::::::::::::::::::::::::::::::
, l l l llll|ミミミミミミミlミミl*ll泉l|~~トlー-i゙l~~冫 ~ |゚l、.丿彡彡彡l|::::::|;;;;;;|::::::::::l|
lj,,',,',,',,',,',,',,',,',,',,',,',lミミl*ll丿l| llヾヾiー ゚l゙~i:!』,, l『』i゙゙゚゙:lヽ ̄ ̄l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l| ::::::::::::::::::::::::::::::::
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ヽ、,l~ヾl::::::::::l| :::::::::::::::::::::::::::::::::::
ヽ、 l~ヾ;;;ll________
ヽ、 l~l| ┌───┐
ヽ、l │∥∥∥│
.
355 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:07:43 ID:1v3udkV.0
未明、余裕のない半鐘の音にやる夫は飛び起きた。
カンカンカンカンカン!!
カンカンカンカンカン!!
カンカンカンカンカン!! i .ノ|___
/ ̄ ̄ ̄ ̄ `ヽ (
,r' ' , /
/ _ ' ,
,' \ 、_/ ` lj. ' ,_
/{ ( ○)三三(○ ) } `ヽー-、.
r'{/ ハ (_人_) イ )ヽ `''ー-、
./ ゝ_\_ |ilililili| _ ,イ ´ ハ `ヽ
( /Y ` ̄`⌒´  ̄ ̄`''ー-、__>-、_). ', /
.(`_ ,r‐、/_人 _, 干 ヾ } 7、 /.
.,r'´三、 /ユハ`ー-‐'`ヽ = ノ`ーァ‐<ハ / } /
./ ,r‐‐ミ-' `ー-、 -个ー`ー――‐ ' 彡ノ;{ }、. {-‐、__
/ //////`ヽ,,_ `''ー-=_ `ー--=-''" /;;;'''';`ヽ /ヽ 三-ミ、
./ ///////////`''ー-、 `''ー-=,,_/;;;' } `'ーミ
/ /////////////////`''ー-、 `''ー、 ハ_ (´ー'´ ̄`'
/ .///////////////////////`''ー-、 ノ /`ヽノ
.
356 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:07:59 ID:1v3udkV.0
カンカンカンカンカン!!
カンカンカンカンカン!!
/ ̄ ̄ \
_ノ ヽ、_ \
(●)(● ) |
(__人_) |
'、`⌒ ´ U |
| |
| { 近いな。
ヽr`ー- -=´ <
/⌒'' ー─,, \
/ ィ }
ノ / | |
/ `ヽ i: | | カンカンカンカンカン!!
(__.ィ´ヽ,ム、〉i | |
/ ゝ/ / 7-、
ヽ/ / / /'Y
____ カンカンカンカンカン!!
/ \
/ \ / \
/ (●)i!i!(●) \
| u , (__人__) | やらない夫、旦那さんと番頭はんを頼む。
\ .`⌒´ 〆ヽ
/ ヾ_ノ 私は外の様子を見てくるよって。
/rー、 |
/,ノヾ ,> | /
ヽヽ〆| .|
.
357 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:08:16 ID:1v3udkV.0
店の戸をあけて表に飛び出し、大川沿いに立ったやる夫は息を飲んだ。
丶 _________
> /´ ;`\
´ '⌒丶 '"⌒ヽ、 ∪ \
/⌒ヽ / ⌒:.ヽ!!!!! \
( °;;';) (;' ° ;;;;)!!!!! \
/⌒~´ ヽ``~~゜じ° \
/ ( ,) ; \
/ヾ、_ノヽ、___,,ノ⌒ヽ. ∪ \
l! ト、ノ),、 ノ l!
|! | / |! あ、ありえへん……
. l! | / ; |!
\ l /⌒'⌒/ ∪ /
ヽ、 | / / /
\ ,`ー┴---一´ , /
(__ _ ,,,, ,,ノノ ,ィ<
`ヾ`` `` \
/`ー─-、‐ ''' \
/ ゝ \
.
358 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:08:31 ID:1v3udkV.0
船場の辺りから上がる炎が空を真っ赤に焼いている。
l、 \ Y´ l .,> / Y´
.lヽ l ,i、l l /⌒l ./ .! .j l
l .ヽ .| l !} │ / ! / ! /l /
廴 `" .{ ネ ノ| :! .| ! / .| / ! ./
ミ_ .! .| ! .!.! .! | ./ l.! .l /
ヽ l. l リ ! | ./ リ / 从{ ll
ヽ、 l { ゙l, .| .!.l゙ / / /.|
.! ゙''-、 .| .| ! ! |.! / ./ /´ /
..! トヽ、リ{ ! l ! .リ l./ ! /
│ .ヽ .ヽ .l | ./ 从 リ .|./
! .\、 ヽ.! | / / l
.! {ヽ,\ ヽ ,! ./ ! l
∨ l `'Λ | l │ │ i′
.l ゙'レ |.l リ l lr'゙} ._.! .il|
! ` 从 l,! ! .|リ /! ./ |
.! l l リ ,ト | l |しイ {
l, |.l .! .l / | ! /
.\ ゙l l .、│ . l / l l /
`''″゙ヽ 廴) .ヽ ./ , 、 .乂! │ /
l ! ノ⌒i 廴 ノ| .l./ ,! .| │ {
l ...l .! ゙l、 そ l゙ .l゙ l.l / レi ノ イ il゙ ノ/
! ヽ|、 .ヽ ヽ ! .,! リ / ,/ / し' { ,ノ./
l .、 .ヽ ) ヽ .i | .l,〃 . ! ! `Y l /./
ヽリ、 ¨ヽ,│ il / て / .,! .从 } .| ノ ./
`'!ヽ .゙レ、)\. !.l,._/ .l⌒ ./ ! ,/ / / .ヽ, ./ ./
ヽ. ..l"′ ゙'-、、 ./ ! ./ 廴ノ 廴ノ 廴/ { /
\ `ヽ `゙'''" .! / 廴ィ
゙''ーz_) 廴ッ--'" {
しィ
.
359 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:08:45 ID:1v3udkV.0
____
/ \
/ _ノ ヽ__ .\
/ (○)!i!i(○) \ (いや、船場やったら大川の向こうや)
| (__人__) u |
.\ )t-ツ / (この半鐘の打ちようはもっと近い筈や)
/ ⌒´ \
\_(__) i\(__)
| |
そう思い直して、目を西から北へと転じる。
.
360 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:09:01 ID:1v3udkV.0
やる夫の口から悲鳴に近い声が上がる。
____
/ノ ヽ、_\ r ⌒j
/( ○)}liil{(○)\ / /
/ (__人__) \/ / / )
| |i|||||||i| / / / /
\ |ェェェェ| / '` ´ / ひ、ひいっ!?
r´ (⌒'ー―- イ′ ´廴
/ > 、 ヽ _  ̄ ̄ ̄) や、やらない夫、出てこい!!
/ -、 } (  ̄¨´
/ ヽ._ __ \
` --‐'´ `゙' 、_.)
/ ̄ ̄\
/u_ノ ヽ、_\
| ((●)) ((●))|
. | (__人__) | どないした、やる夫……
|ヽ |!il|!|!| / .|
. | |ェェェ| }
. ヽu } げえっ!?
ヽ ノ
/ く
| \
| |ヽ、二⌒)、
飛び出て来たやらない夫も、やる夫の指さす方向を見て腰を抜かす。
.
361 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:09:20 ID:1v3udkV.0
大川を挟んで対峙する船場と天満、川の中ほどに埋め立てられた中之島、
それらが一斉に燃え盛っていたのである。
あろうことか、天満橋までもが炎に包まれている。
l `'Λ | l │ │ i′
.l ゙'レ |.l リ l lr'゙} ._.! .il|
! ` 从 l,! ! .|リ /! ./ |
____..! l l リ ,ト | l |しイ {
/////ヘ., |.l .! .l / | ! /
//// !ヘ ゙l l .、│ . l / l l /
.i/i/ ',____.. 廴) .ヽ ./ , 、 .乂! │ /
/i/ II iI ,;;;;;;∧.l ! ノ⌒i 廴 ノ| .l./ ,! .| │ {
 ̄i |;;;;;/ ヘ_! ...l .!. +.そ l゙ .l゙ l.l / レi ノ イ il゙
| ┌┐ | ;.; i ヘ\_ || ヽ ! .,! リ / ,/ / し' {
,.,.,| |!+!|. |;.;.;.;_ ', \ ̄ ̄|`i __ ___ | .l,〃 ....i´| ̄ ̄i___.`Y l
;.;.;.;  ̄. ..;.;.;.;.;.||| |  ̄|ii ii | | ,,:,,,,, |I|__ト、./ ', / て |...| ii ii|´ II II. } .|
;,;,;,;,__ ;,;,;,;,;,;iii....| |`i|.. | ii.|,;,;,;,,, ..|I.ノ (. |¨|. ',┌──┐ ./|...| ii ii`i ___.../ .ヽ,
;:;:;:;:;ii || ii |;:;:;:;; ̄ .| `.|i.、 ,..|;:;:;:;:;.`Y |..____________ | //// ノ 廴
 ̄`i`i ̄ ̄ ̄i`i ̄ ̄i''/i.,ノ)i| ̄ii ̄i ̄|.| 人 TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT| ̄ii ̄i ̄`i
_二.|..|..二.. ,..|..|二 `Y´( i/ ̄'.  ̄'l.,/ く、  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.ヽ、 /i_| ) 、.::: / }. ̄ ̄ ̄...丿)  ̄ ̄ ̄ ̄`--i:::::..、..
:::::::::.__,ノ )./'__./ (_,ノ).: (:::::::::::::::::::::: \ノ!.::: ;../ (.;;;;;;;;;;;;;.ノ!.;;;;;;;;\ ̄. ,ノ).:
::::::::.(. (_,/ (__) ::::::::::::::::::::::ゝ/ ,).. _-.| \.= \..`Y´(
天満側の火は天満堀川を飛び越えてこちらに向かうだろう。
最早、一刻の猶予もなかった。
.
362 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:09:48 ID:1v3udkV.0
____
/ \
/ \ / \
/ (●)i!i!(●) \
| u , (__人__) | やらない夫、べか車や!
\ .`⌒´ 〆ヽ
/ ヾ_ノ 旦那さんと番頭はんをべか車に!!
/rー、 |
/,ノヾ ,> | /
ヽヽ〆| .|
―― [] ] / ̄三\
| l ̄ | | / \三/\
|_| 匚. | 三 ( ○) ( ○)
| | 三 u (__人__)
|_| ≡ ` ⌒´ノ
二 }
[] [] ,- r⌒ヽ rヽ, }
// 三 i/ | ノヽ わかった!!
匚/ 三 三 / )≡
三 三 / /≡
ニ三 ./ /
二≡、__./ /、⌒)
三 \  ̄
三 /\ \
三 /ニ ヽ 三 三
三 / ニ_二__/
三 ./ .
≡ / |
≡ /
三_ノ
言われたやらない夫が店の奥に駆け込む。
.
363 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:10:07 ID:1v3udkV.0
やる夫自身も店の中へと駆け込み、布団部屋から布団を抱えて井戸に向かう。
_____
/三 \ ―― [] ]
\三 / 三 | l ̄ | |
'(○) (○ ) 三. |_| 匚. |
| (__人__) u 三 | |
\ `⌒,/ゝ /⌒ヽ |_| [] [] ,-
/ | \| 三 //
≡( ヽ 三 三 匚/
. ≡\ \ 三 三
(⌒、\ \.__、≡二
 ̄ / 三
/ /ヽ 三
三 三 / ニ ヽ 三
\__二_ニ ヽ 三
\ ≡
\ ≡
` 、_三
____
―― [] ] / 三\
| l ̄ | | . 三 \ 三/
|_| 匚. | 三 . ( ○) (○)'
| | 三 u (__人__) |
|_| 三 . ` ⌒´ /
[] [] ,- r⌒ヽ rヽ, }
// 三 i/ | ノヽ
匚/ 三 三 / )≡
三 三 / /≡
ニ三 ./ /
二≡、__./ /、⌒)
三 \  ̄
三 /\ \
三 /ニ ヽ 三 三
三 / ニ_二__/
三 ./ .
≡ / |
≡ /
三_ノ
井戸端で布団に水をぶちまけ、濡れた布団を抱えて表へと駆けもどる。
.
364 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:10:25 ID:1v3udkV.0
表では、すでにやらない夫がダディをべか車に乗せていた。
/\___/\
/ /u |l ヽ ::: \
. | ( )ill、( )、ι| あわ……
| ,,ノ(、_, )ヽ、,,U |
. | il| ,;‐=‐ヽ .:::::| あわわわ……
\ `ニニ´ .::/
/`ー‐--‐‐―´´\
._ _ _
..(ヽl_l_ll_l,l
ヽ r
│ |
|/ ̄ ̄\
/ \ ノ
| ( ●)(●)
.| (__人__) やる夫!
| ` ⌒´ノ
.| } いつでも行けるで!!
.ヽ }
ヽ ノ
l/ く
| |
| |
.
365 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:10:40 ID:1v3udkV.0
___
/ \
,---、 \, 三_ノ \―、
.l l (●) (●) \ |
| | (__人__) | | さ、番頭はんも
.| | |!!il|!|!l| / /
ゝ |ェェェェ| ノ 早よ乗ってください!
\ /
/ |
/ |
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_____
.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.::::::::::::::::::::::::::ヽ
.:.:.:.:.:.:.:/:.::::::::::::::::::::::::::::: ヘツ
.:.:.:.:.:.:.:|:::::::::::::::::::::::::::::/ ⌒| 私は…
.:.:.:.:.:.:.:|::::::::::::::::::::::::::::〉 (O|
.:.:.:.:.:.:.:|:::::::::::::::::::::::.(@ ⌒ ) ええ………
.:.:.:.:.:.:.:.|:::::::::::::::::::::ノ i-|
.:.:.:.:.:.:.:.:.xア''ー'゙'ー''、. `ノ
.:.:.:.:.:.:.:/ ー`¨`''''ーゝ─ ゙-、
.
366 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:10:55 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄ ̄ \
ノし ゙\, .,、,/"u\
/ ⌒ (◎)ヾ'(◎)u \
| u ⌒゙(__人__)"⌒ u | 何言うてまんのや!
\ u `ヾ,┬、/` ,/
. /⌒/^ヽ、 )__( ,ィヽ、 ええから早う!!
/ ,ゞ ,ノ ゙⌒" , ゝ、
l / / ト/.\\
_____
/.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
|.::::γ⌒ Y ⌒ヽ::::::|
|::::/ ノ ヽ、 u|:::|
|:::〉 (一)::(ー) 〈:::|
(@ ⌒(__人__)⌒ @)
\u. /
/´ ̄ ィヽ
〈  ̄ ‐- 、 i
`ー,‐ -、_ ヽ | l
/ ヽ.て 〉 .| l
l | 、彡イ ヽ_⊥-‐ 、
l _,l  ̄/ l
γ ト、_ / ̄ `l_-‐ ´
(___〉  ̄ヽ --‐
やる夫はいく夫を無理矢理べか車に乗せ、二人の頭上に濡れた布団を被せる。
.
367 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:11:12 ID:1v3udkV.0
そうしてべか車の前に回り、先端にくくりつけた縄で車を引く。
____
/ \
/ \ / \
/ (●)i!i!(●) \
| u , (__人__) | やらない夫、行くで!
\ .`⌒´ 〆ヽ
/ ヾ_ノ
/rー、 |
/,ノヾ ,> | /
ヽヽ〆| .|
._ _ _
(ヽl_l_ll_l,l
ヽ r
│ |
|/ ̄ ̄\
/ \ ノ
| ( ●)(●)
. | (__人__) よっしゃ!
| ` ⌒´ノ
. | }
. ヽ }
ヽ ノ
l/ く
| \
| |ヽ、二⌒)
やらない夫が後ろからそれを押す。
.
368 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:11:34 ID:1v3udkV.0
大川沿いに出て、風向きを読む。
___
/ \
,---、 \ /\―、
.l l (●) (●) \ | 風上は……東か。
| | (__人__) | |
.| | |!!il|!|!l| / / よっしゃ、東に行くで!
ゝ |ェェェェ| ノ
\ /
/ |
/ |
/ ̄ ̄\
/ \ /\
| (●)(●) |
. | u.(__人__) .|
r、 | ` ⌒´ .|
,.く\\r、 ヽ ノ 東やな、わかった!
\\\ヽ} ヽ /
rヽ ` ヽ / ァ'´ヽ
└'`{ . \.| / i
ヽ、._ ヽ、_,r' .|
`ヽ、 /' |
`'ー'´
.
369 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:11:54 ID:1v3udkV.0
北船場から天満にかけてを襲った火は、
一昼夜かけて辺り一面を焼き払い、夜四つ頃になって漸く静まった。
,.イ
(_二二  ̄7,イ人 ,ィ ト、
//(_ノし' ,ィ ト、 ( :し' しイ
,.イ // ( :し' しイ  ̄7 | ̄ :ト、j7__,ィ
| 'ー―'´ /  ̄7 | ̄ /,イ :! >ィr―' l7l7rァ
∠,. -―― ' /,イ | </ノノ <_ノ:|」 /'´
∠/ノノ
ノしイ リ
/⌒)ノ ノ
(:しイ
__,.ィ  ̄´
,ィ ⌒):::_ ヽ
ギャアアアアッッ!!!! ,イ r―'r' /'´ )ノ
(:::::し'::::::ノ ('´
|! ,人ト、 `⌒)f´: : : ヒィィ
トJ人 ^゙^^' : : : :ト、: : _ノしイ: : ⌒)!
^^"'''" 人ィ | : : ::ノ::::| .∧_∧ノ: : :レ' ノ
''゙' '' "'' |! .∧_∧ (・∀・; ∧ ∧,ィイ(、
グボア,,, 、,.,,,,.,,,..λ∧ ゲフ ・ ´Д`;) i i’)) (;゚Д゚).,,,.,,.,,つつ
<@;;, (メ_;;。#)@;;';;@)(@∴U(゙p;`;,)ξ;,と@;, (、0;'。#)っ@)~ と´#;;メつ#!i;-゙)っ
"'`''"";""゙'";;'""∵""''"""゙'" ~;゙`'゙゙;''∨"" "'`;"""∵∵`'
被害は尋常でなく、町にして八十九町、一万五百四十二世帯を焼き尽くした。
のちに「寛政の北の大火」と呼ばれる大惨事であった。
【夜四つ】午後十時
.
370 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:12:08 ID:1v3udkV.0
┃
┃
┃
┃
┃
┃
・
・
・
:
:
:
|
|
¦
!
371 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:12:22 ID:1v3udkV.0
深夜、鎮火した町を店に向かって戻る。
:::::: :: ____ :::::
/\___/\ :::::: :::::/.::::::::::::::::::::::::.ヽ :::
/ ::\ ::: :::|.::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|::
. | :| :::: |::::::::/ ─ ─ | ::
. | ノ ヽ、 :| :: (@ :: .(○) (○)| :
. | (○), 、 (○)、.:::| : | :::::⌒(__人__)⌒) :
\ ,,ノ(、_, )ヽ、,, :/ :::: \ ` ⌒´ / :
/`ー `ニニ´一''´\ :: ノ \ :
/´ ヽ
/ ̄ ̄\
_-―――- 、._ / _ノ \
,-"´ \ | ( ○)(○)
/ ヽ . | U (__人__)
./ ::::::::::::::::::::::::ヽ | |r┬-|
| :::::::::::::::::::::::::::::::ヽ | ι `ー'´}
l :::::::::::::::::::::::::::::::::;l ヽ u }
` 、 (__人_) .;/ ヽ ノ
`ー,、_ / / く
/ `''ー─‐─''"´\ | \
| |ヽ、二⌒)
闇の中で地面が火種を抱いてぼうっと赤く光って見える。
誰も口を利くこともなく、重苦しい足取りだった。
.
372 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:12:41 ID:1v3udkV.0
足の裏が焼けるのも構わず、奥歯を噛み締めてべか車を引くやる夫。
___
/\:::::::::/\.
/:::<◎>:::<◎>:::\
/::::::::⌒(__人__)⌒::::::\ (どんだけ町を焼いたら気ぃ済むんや!)
| ` ー'´ u |
\ u ::::: /
/ ::::::::::::::::::: :巛 ̄ヽ
/ , :〈⊃ ̄( .}:
腹立たしさで身体が震えていた。
.
373 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:12:57 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄\
/ ヽ、. _ノ \
| (●)(●) |
| (__人__) |
| ` ⌒´ | だ、旦那さん、番頭はん!
| }
ヽ } あれ見てください!!
人_____ノ"⌒ヽ
/ \
/ へ \
( ヽγ⌒) | \ \
\__/
その時、背後でべか車を押していたやらない夫が叫んだ。
.
374 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:13:18 ID:1v3udkV.0
月明かりの下、直ぐ先に井川屋の店が焼け残って立っているのが見えた。
. ===================================================;;;|..│ .
. ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ .
. ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ .
.  ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ .
. ==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@== .
. ─────────‐| 井 川 屋.│───────── .
. :: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| : .
. | |;;| ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||: | |;;| .
. | |;;| ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||: | |;;| .
. | |;;| ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||: | |;;| .
. | |;;| ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||: | |;;| .
. | |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|::::: .
. | ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ .
. | | |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三|| | | | .
. | | |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三|| | | | .
. |__|__|/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||_|__|__|_ .
.\ > '二,. < L__\\ /^! ., / ./ -‐ 二 ̄
:.\\< }}>-、 廴_____廴_廴__l_ ` 、 / /-==ニ二 ̄≧===
:.\\\ /,イ\\ { ̄ >'"〕 廴 ` 、 } ̄ ̄ ̄二ニ=-< .イ . 'イ>、. \\
.:\\\\/.{_.>、\ >''" ノ〉' 「 ̄}厂 ̄}/〉__r―ヘ'\/〉二.イ ̄ ̄ `T⌒L_/// /〉〉 ̄ ̄
:.\\\\\ / /\>''" ,. <// l_{ //廴〕、 、\〈 ィ7 _辷'二二.. ==-‐''二__./
:.\\\\\\>''" ,. <_,r-// 从/ ./イ {!⌒ヾ=-≦ヾ\二Z二Zニ=-==='⌒! ̄ ̄´ ./
両側と向かい側の店は無く、たった一軒、ぽつんと心もとなそうに立っていた。
.
375 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:13:38 ID:1v3udkV.0
_____
/.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
|.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
|::::::::/ \:三::/i:::|
|:::::::〉( ○)::( ○).|
.(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
| u |i|!i|!| | 焼け残って…る?
\ `⌒´ ,/
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
:/\___/ヽ :
:/'''''' '''''':::::::\:
:.| (◯), 、(◯)、.::|:
:.| " ,,ノ(、_, )ヽ、,,"".:::|:
:.| .:::::|: あの火事で?
:.| ´,rェェェ、` .::::::::|:
…\ |,r-r-| .:::::/… んな阿呆なことが……
:/ ! `":::::7 ヾ`ニニ´ /|:::::::"'ヽ:
: | | :::::::::::::ト\ ( . / /:::::::::::::| :
: ! | ::::::::::::::l::.ヽ //::::::::::::::::::| :
.
376 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:13:53 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄\
/u_ノ ヽ、_\
| ((●)) ((●))|
. | (__人__) | 間違いおまへん!
|ヽ |!il|!|!| / .|
. | |ェェェ| } 店、ちゃんと残ってます!
. ヽu }
ヽ ノ おい、やる夫、急ぎい!!
/ く
| \
| |ヽ、二⌒)、
____
/ノ ヽ、_\ r ⌒j
/( ○)}liil{(○)\ / /
/ (__人__) \/ / / )
| |i|||||||i| / / / /
\ |ェェェェ| / '` ´ / お、おう!
r´ (⌒'ー―- イ′ ´廴
/ > 、 ヽ _  ̄ ̄ ̄)
/ -、 } (  ̄¨´
/ ヽ._ __ \
` --‐'´ `゙' 、_.)
やる夫は狂ったようにべか車を引っ張って走る。
.
377 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:14:07 ID:1v3udkV.0
間違いなかった。
===================================================;;;|..│
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
 ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@==
─────────‐| 井 川 屋.│─────────
:: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
| |;;| ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||: | |;;|
| |;;| ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||: | |;;|
| |;;| ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||: | |;;|
| |;;| ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||: | |;;|
| |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|:::::
| ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
| | |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三|| | | |
| | |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三|| | | |
|__|__|/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||_|__|__|_
井川屋は、周囲が焼け落ちる中で、奇跡のように類焼を免れていた。
.
378 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:14:25 ID:1v3udkV.0
ダディは、焼け残った店を見上げて呟く。
/\___/ヽ
/ ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
. |(○), 、(○)、 :| +
| ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|
. |.u (^・^> 。.:::::::| + 一体……
\ ゚ ⌒´ u .::::/ +
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、 これは、どうしたことや……
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
: :
:/ ⌒`"⌒`ヽ、: 天満の天神さん、
:/,, / ̄ ̄ ̄ ̄\:
/,//:::::::::::::::::::::::::::::::::\: おおきに、ほんまおおきに
:;/⌒'":::..:::::::::::::::::::::::::::::::::|⌒ヽ:
: / /、:::::..:::::::::::::::::::::::::::::/ヽ_ \: ありがとうさんでおました……!
__( ⌒ー-ィ⌒ヽ、:::::::/⌒`ー'⌒ )
━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"━━
いく夫はその場に跪き、天満宮の方を一心に拝んでいた。
.
379 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:14:42 ID:1v3udkV.0
井川屋が助かったことで、四人ともどっと疲れが出た。
/ ̄ ̄\
/ ヽ、_ u.\
(-‐)(ー-) .| zzz…
(__人__) U |
(,`⌒ ´ |´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ
. { U u. | ヽ\__
____.,{ / \__)_
(____`ヽ_(  ̄ ゙̄ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ、 )
 ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄
, -─‐──‐-、
/ ゚ \
/ ; ゜ ° \
l U ; l⌒ '"⌒ ヽ、
| u. ; |ー \
. ! u. _ノ′ヽ、__ ∪ ,; \ ,rー、
ゝ。((-‐) (ー-))::。 i'′⌒ ̄ ̄` ̄ ̄ ̄ヾ`ヽ ヽ
( ヽ'"(__人___)"'__ ,ノ ヽ、____"___,、___ソノ__ノ
´ ´ `゚~゜´^" ´~`゚゜`⌒ ´"´´゚^゚^ ~゜゚`´^゙^ ^´'
店に上がりこむなり、倒れるように眠りについた。
.
380 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:14:58 ID:1v3udkV.0
どれくらい眠ったのか、やる夫はふっと眼を覚ました。
開いたままの戸口からうっすらと朝日が差し込んでいる。
-─‐──‐-、
/ \
/ ; ヽ
l U l
| , 、 ; |⌒´⌒`ヽ、 (なんや……)
!、 _ノ" "ヽ、__ ∪ \
ヽ ((●) (●) ):: /⌒゛` l: (無用心やな……)
/ヽ~゜(__人___)~__ ,ノ| , |
/ /` ⌒ ´ | | , !
/ / | `ー-,,,|" |___,ノ |
/ / | | | ,lー─- 、
, --‐-ー、_/ l ,| | ,/ ) )
く / / ァ- ,ノ \ノ^ノ^/⌒ヽ.j\ /^ー-‐'
`ー' ー´ ̄ (_イ_,イ、_,ィ'´__/
鉛のように重い身体を持ち上げる。
.
381 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:15:12 ID:1v3udkV.0
その時、戸口に立っている人影に気がついた。
.______ _
./´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
./:::::::::::;:--‐─、::::;─-、:::::',
.l:::::::/ u. Y ヾ::|
|:::::| _,,ノ:::::::::::::ゞ,,_ ',|
|:::::| ( ο )::::::::( ο ).l
l::::::〉 ⌒ ⌒) …………
(@ ( ___ 人__) l
.| | r─┬─| |
| u. ` ⌒ ' |
.丶 ./
ヽ ノ、
/ \
/ \
../ ヽ
____
/ ノ \\
/ (●) (●)\
/ ∪ (__人__) \
| ` ⌒´ | 番頭はん?
\ /⌒)⌒)⌒) //⌒)⌒)⌒)
ノ | / / / (⌒) ./ / / どないしはったんだす?
/´ | :::::::::::(⌒) ゝ ::::::::::/
| l | ノ / ) /
ヽ ヽ_ヽ /' / /
ヽ __ / / /
.
382 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:15:32 ID:1v3udkV.0
と、いく夫ががっくりと膝を折ってその場に崩れ折れる。
_____
/.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
|.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
|::::::::ゝ :::::\:::/ |
|::::::( 。<一>:::::<ー>
(@ :.::: 。゚~(__人__)~゚j
| 、 u ;゜.` ⌒´,;/゜
/ ゚:j⌒ヽ゚ '"'"´(;゚
/ ,_ \ \/\ \
と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ
____
/ノ ヽ、_\ r ⌒j
/( ○)}liil{(○)\ / /
/ (__人__) \/ / / )
| |i|||||||i| / / / /
\ |ェェェェ| / '` ´ / 番頭はん!?
r´ (⌒'ー―- イ′ ´廴
/ > 、 ヽ _  ̄ ̄ ̄)
/ -、 } (  ̄¨´
/ ヽ._ __ \
` --‐'´ `゙' 、_.)
やる夫は驚いて駆け寄り、助け起こす。
.
383 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:15:47 ID:1v3udkV.0
声を聞きつけたダディとやらない夫も目を覚ました。
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:|
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
. | u `-=ニ=- ' .::::::|
\ `ニニ´ .u ::/ いく夫、どないしたんや。
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
_____
/.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
|.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
|::::::::ゝ :::::\:::/ | 旦那さん、えらいことでおます。
|::::::( 。<一>:::::<ー>
(@ :.::: 。゚~(__人__)~゚j 天満宮が、私らの天神さんが……
| 、 u ;゜.` ⌒´,;/゜
/ ゚:j⌒ヽ゚ '"'"´(;゚
/ ,_ \ \/\ \
と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ
言ったきり、号泣するいく夫。
.
384 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:16:05 ID:1v3udkV.0
三人はその言葉に顔を合わせ、競うように外へ出た。
/ ̄ ̄\
/ ー ‐\
| .u ( ○) ( ○)
| U (__人__)
| ` ⌒´ノ
| u. }
r⌒ヽrヽ, }
/ i/ | __ ノヽ
./ / / )
./ / / // / ̄ ̄ ̄\
/ ./ / ̄、⌒) / \ /
.ヽ、__./ / ⌒ヽ ̄ / u .(○)三(○)、
| (__人__) |
\ `⌒´ /
/´⌒ ヽ ̄ rー、
/ , j / ノ
/ く} l' /
ヽ ヾ |/
\_ノ j
朝靄と燃え残りの白煙のたなびく中、天満宮目指してよろよろと走る。
.
385 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:16:19 ID:1v3udkV.0
しかし、あるべき方向に建物は見えなかった。
iv'ヘ
| ;`;|
. . . . . . . | ;'l:| i'`'i 、 、"''''"´ . . . . . . : : . :
. . . . . _,;::!:`l'| ζ\ |;`;| ∥ . . . . . . . . . . .. . . . ,.,:::
._,. :.':"..._|_.;l:| \';、\ :|':i;;| . i'1 ||/> ,, ,.,.;,;::::,:::::;''" ..:.::;':;
_.....:;;:;:;::';::':':'"|_}:;| \';、.\|;';;;| ./〉 |;|_r//:;:':''"゙"゙゙'..:::::.::;::;:::;:::;:;';';:::';'::'''"
` ´ ...:.,.._ |_|`|_r:‐:‐:‐:‐\';、\;| r‐//┐_|:|::::::::;⊥:';'"'''` .;:;'、;':'":'" . .
,.,:'".,:::;:':;'' . |_};|::::::::::: : :: : {二l\;i`!、::://:::::::::::::::::::r| .::| . . . . . : : . :
';'::'''" |_| ̄/\:::::::/`|_{┬| |;、\::::::::i'|::::::r┴冂、、 , -─'゙7´ ̄ ̄ハ─r‐
、v,..v、 |_}::/ 、';';〉.:/ /{_|┴lニニニニニl.r┴、_|_|_|:彡v、./ /.:: .::./....::/ ,::'.ソ;:::
─'ー;;ミ゙'爻爻ミ;.. |_;l'_;_;_∠;/_/___l_,,:;;}┬┴┬┴┬┴┐::| .:::|彡ミx;: -─: ッ淼w ー ywv、‐ー
゙':;ゞ;爻彡炎炎;ゞ~゛'' ┘⊥ 」_ | |{_|┴┬┴┬┴┬┴┤ .:|彡ミメ゙';ヾ: ;:; ';: ;:; 'ヾ淡炎ミミx:;'
'' ;~ ;^::;”v:";y;''゚ ; ::;y ; ::; : ~゛'''' ┴'::⊥Λ二\.:| .:|ー:| ;~ ;y ::; : ;:; 'ミ゙': ;: ',;:; ;~'',;'':; ;
";: ;: ;: ;: ; ::; : ;:; :; : :: :; : ;:; ;~'',;' ' : ;:; ;~ ; ::; ;~'',;'' ; : ; ::; :;~'',;:; ,”v:": ;:; ';v:'';'' ;~'',;'
: ;:; ;~ ; :; ;~ ',;'' ; : ; :: :; ~'' ,;: ; : ;: ; : ;:; ; ~'',;' ;:; '゚ ":;;;: : ; : ;:
:; . ;: ; ; '', ;' ' .;~' ', ;' '゚ ". . ;; : ; : ; : ;: . ; :; ;~ ; :; ;~ ',
: ; .' : ; . ; . ; ' : ' ;~ ', . . . ' : '', ; ' ' ; '
そう、あるはずの天満宮が無くなっていたのである。
.
386 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:16:35 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/ ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
. |(○), 、(○)、 :|
| ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|
. |.u (^・^> 。.:::::::| 焼けた……
\ ゚ ⌒´ u .::::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、 焼けてしもた……
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
呻くように言って、ダディは焼けた土の上にへなへなと崩れた。
.
387 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:16:46 ID:1v3udkV.0
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¦
!
388 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:17:07 ID:1v3udkV.0
桁外れの被害を出した大火が続き、いかな粘り強い大坂商人も、大打撃を受けて立ち上がれない。
町は文字通り灯が消えたようになってしまった。
:.: :.: . . . . . . . . . . .
_:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.: . . . . . . . .
: .  ̄ ̄Λ_Λ──______:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:.i ̄ ̄i:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
:::::::::: /:彡ミ゛ヽ;)ー、::::::::: Λ_Λ. .  ̄ ̄ ̄ ̄─‐. ⊂ニニ⊃ ______:. :.:. :.:. :.:. :.: Λ_Λ:.: :.: :. :. :.
::::::.../ :::/:: ヽ、ヽ、 ::i:::::....(-д-::: )ー、::::::....... ( ゚д゚ )ー、 Λ_Λ:: .. . ̄ ̄ ̄─(-д-::: )ー、::..
::. . / :::/;;: ヽ ヽ ::l::: . /i ;: :::i:::.::::::..... . /i ;: ::. i /:彡ミ゛ヽ;)ー、:::::::... . /i ;: :::i::..
: . (_,ノ⌒\;; ヽ、_ノ:l: . (:: ;;__/ :::./ |:::::...... (:: ;;__/ :::./::/ :::/:: ヽ、ヽ、 ::i::::.... . (:: ;;__/ :::./ |:: .
i⌒\)i⌒\ /:: .. / ____/ :|:::::::::.... . . / ____/::/ :::/;;: ヽ ヽ ::l:::::...... / ____/ :|::..
| :::| ::;;_| :::| ::;;ノ: . i⌒i_ノ :i⌒\ /::::::...... . i⌒i_ノ :i⌒\(_,ノ⌒\;; ヽ、_ノ:l::::... i⌒i_ノ :i⌒\ /::..
| :::| | :::|:::: .... | :::| ::;;_| :::| ::;;ノ::::::::::... .. | :::| ::;;_| :::| ::;;ノ i⌒\)i⌒\ /:::::::.... | :::| ::;;_| :::| ::;;ノ::::...
(___/ (___/::..... | :::| | :::|:::::..... . | :::| | :::|:: . | :::| ::;;_| :::| ::;;ノ::::::.... . | :::| | :::|:::: ::...
(___/ (___/:::.... .. .. . (___/ (___/:: : | :::| | :::|:::::::.... . (___/ (___/:::.... ..
(___/ (___/:::.....
焼けた天満橋は何とか補修されたが、それ以外はなかなか普請も進まず、
船場も天満も焦土の目立つまま、秋を迎えていた。
.
389 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:17:23 ID:1v3udkV.0
疲れた顔で戻って来たやらない夫に、やる夫が声をかける。
____
/_ノ ヽ、\
/( ●) (●).\
/ (__人__) u. \ やらない夫、
|ni 7 ` ⌒´ . |n
l^l | | l ,/) U l^l.| | /) 鈴三屋はんのご寮さん、
', U ! レ' / . . | U レ'//)
{ 〈 ノ / 加減はどうやった?
..i, ."⊃ rニ /
."'""⌒´ `''""''''
/ ̄ ̄Y ̄ ̄\
/ ヽ,_. ノ \
(一)(一 ) ( 一)(一)
(__人__) (__人__)
{`⌒ ´ 彡 ` ⌒´ノ …………
{ .u }
{ 彡.u }
ヽ、 / ノ
.ン ヽ
// |
(⌒二_/ | . |
やらない夫は無言で首を横に振る。
.
390 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:17:39 ID:1v3udkV.0
鈴三屋も大火で店を失っていた。
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.:.:.:.:.:.ヽ、
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l.:.:.:.:.:| :.;ハ.:.:∧ .::.|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ト、 .:. |.:.l | リ V .ト、 .:.:.:.:.:.ト、.:.: l
. ,′.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. V.:.Ⅳ |/ V.| \.:.:.:.| \|
. l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: r‐∨─── ' |/ 、__ レヘ:|
从.:.:.:.:.:., ┐:.:.:.:.:.:. イ .:.|:::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::/;;;;;`,ハ/.
. jイ.:.:.:.:/ -ミ.:.l.:.:.:.:.:.:| .: |:::::::;;;;;;;;;;;:::::::::::::j{ ;;;;;/.:.|
|.:.:.:〈 (ヘ.:ト、 :.:.: ト、.:| 〈;;;;; レヘl
∨.:.:.\ ` リ、', .:.:| リ \ |
Vヘ.:.:.:ヽ __ ,ハ :| ノノ
Ⅵ.:.:.:. ∧ V '´ イ ___ _
リ|.:.:.:.:.川\ / ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`:..、
Ⅵ.:.:.:,イ \ ` ̄二'"/ /:.:.:.:./ 二二二 \:.、
イ^V `:... / /:.:.:.:.:.://:.:.:.:.:.:.:.:.:.\〕:ヽ
. __r┴- .__ ‐ァ-- '′ /:.:イ:.:.:/:.:.:/ {:.:.:\:.:.:.:.:.:.:.:.∧
/',、|  ̄ ¬‐- 、 ├- _ 仏/|:.:.:|:.:.l:| V:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:「〉
/','、,',、\ /L | 丨 .':.:.7力:.:.!X{:!_ ト、:.:.:.!、:.:.:j_:.:.:.1
i:.:〈Z |:.:.:l:| _l_ ヽ\{七/l:.:.l/i:!
l:.:.:.L(|:.:.:.《 ¨﨤` 﨤ア:∧j:|
|:.:.:.|:.:|:.:.:.| ' 厶':.:川
|l:.:.:|从:.:.:|〕ト - イ:.:/:/ リ
)\(ヾ「\! ` 7壬i: //〕ト.
/{: :i:i: : : :∧-- --/: : : :i:i/ハ
.′V∧: : : : :∨ ̄ ̄ l: : : : i:i/ :
, V∧: : : : :|ニニニ.!: : : i:if i
i Ⅵ:i : : : ∧ !: : :i:i:リ |
} }ヘハ : : : ∧ /: : :i:i/ {
| ハ ヾト、: : : :im/: : :イ/} }
| '⌒ ー─ミ∧: : jX: : :.//.ノ ⌒│
店が焼ける前に何とか僅かな荷物だけは避難させたが、商い再開の目途は立たなかった。
ご寮さんはあれきり寝込んだままだ。
.
391 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:17:52 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄ \
_,ノ ヽ、,__ \
(●)(● ) |
(_人___) U |
'、 │
<二ニヽ | 旦那さんと番頭はんは?
./-‐ `i 、 ___,. イ
{/´、 ',┐ \
しrヽ V ヽ
ヽ、_ ヽ ィ }
\ \ ノ i
____ _____
/ \/ \ ‐-、
、-‐ /ノ ヽ、_ ノ ヽ、\ ___,ノ-、
、- !、,__/(一 ) (一 ) 彡 ( 一) ( 一)ヽ ___,ノ
!、,___ l (__人__) (__人__) |
\ `⌒ ´ 彡 ⌒´ /
/ ヽ
今度はやる夫が首を横に振る。
.
392 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:18:12 ID:1v3udkV.0
井川屋の店主と番頭、揃って生気がなかった。
無論、おのおのの務めは果たしているものの、
以前のあの二人特有の掛け合いは全く聞かれなくなった。
/\___/\
/ ::\
. | :|
. | ノ ヽ、 :|
. | (●), 、 (●)、.:::|
\ ,,ノ(、_, )ヽ、,, :/
/`ー `ニニ´一''´\
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_____
.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.::::::::::::::::::::::::::ヽ
.:.:.:.:.:.:.:/:.::::::::::::::::::::::::::::: ヘツ
.:.:.:.:.:.:.:|:::::::::::::::::::::::::::::/ ⌒|
.:.:.:.:.:.:.:|::::::::::::::::::::::::::::〉 (O|
.:.:.:.:.:.:.:|:::::::::::::::::::::::.(@ ⌒ )
.:.:.:.:.:.:.:.|:::::::::::::::::::::ノ i-|
.:.:.:.:.:.:.:.:.xア''ー'゙'ー''、. `ノ
.:.:.:.:.:.:.:/ ー`¨`''''ーゝ─ ゙-、
何より、二人とも一気に老け込んでしまったのである。
.
393 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:18:27 ID:1v3udkV.0
前回、天満宮が焼失してから再建まで九年かかった。
Π Π
旦三l二二l二二l二二l¨/^\¨l二二l二二l二二l三旦
/ //'^\\ ∧
/ //`¨O¨´\\ ∧
/ // 〔王l王l王〕 \\ ∧
/ </=======\>. ∧
/ ,′ `, ∧
/ / γ´三三三ヽ \ ∧
/ 乂ゞ 、 /゙/ ◎ ヾヽ , 彡丿 ∧
≪亞亞亞`<三三三三三彡` ‐-((t))-‐ ´乂三三三三三彡´亞亞亞≫
| | | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| | | |
| | | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| | | |
| | | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| | | |
| | | |l=ll=(Y)=ll=l| | | |
| | | |l=ll=GQ=ll=l| | | |
| | | |l=ll=.从.=ll=l| | | |
o | | | |l=ll=ll=ll=l| | | | o
||=ll=ll=ll=ll=ll=ll=l┌―――‐┐f=ll=ll=ll=ll=ll=ll=||
||_||_||_||_||_||_||_||l_.奉納_.!.l|_||_||_||_||_||_||_||
[二二二二二二二二二二二|l三三三三l|二二二二二二二二二二二]
| .|:::::::::::::::::::::::| .|::::::::::::::::::::::|l三三三三l|::::::::::::::::::::::| .|:::::::::::::::::::::::| .|
凵:::::::::::::::::::::::凵::::::::::::::::::::::|l三三三三l|::::::::::::::::::::::凵:::::::::::::::::::::::凵
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//_ _ _ _ _ _ _ _\\
//_ _ _ _ _ _ _ _ _ \\
//_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _\\
今度は一体、どれほどかかることか。
.
394 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:18:46 ID:1v3udkV.0
ダディは今七十四歳、いく夫は五十九歳である。
果たして、生きて再びその目で天満宮を拝むことが出来るのか。
:::::::::::::::/\___/ヽ
:::::::::/ ::::::::::::::::\
:::::::::| i|i|__,,,,,.ノ ヽ、,,,_.::|
:::::::::| .゙  ̄" |゙ ̄ " :::|
:::::::::| ` ' ::|
::::::::::\ /ヽニニ='ヽ::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
:::::: :: ____ ::::: :::: ::
:::::: :::::/.::::::::::::::::::::::::.ヽ ::: ::: ::
::: :::|.::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|:: ::: ::
:::: |::::::::/ ─ ─ | :: ::
:: (@ :: .(○) (○)| : ::::
: | :::::⌒(__人__)⌒) : :::
:::: \ ` ⌒´ / : :::
:: ノ \ : :::
/´ ヽ :::
再建に向けて何の尽力もできない今の井川屋を店主ダディは恥じ入り、
いく夫もまた、その身を焼いてまで井川屋の身代を守った
天満宮への寄進が叶わないことに身を捩っていた。
.
395 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:19:05 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄\
/ ヽ、_ \
(⌒)(⌒ ) |
(__人__) u |
| |┬‐| | せめて私らだけでも元気出さな。
| || .| |
(`ー´ / 何ぞ美味いもんでもこしらえるよって。
ヽ /
〉 〈
| |
| |
___
/ \
/ノ \ u. \ お、おう。
/ (●) (●) \
| (__人__) u. | (あれ?)
\ u.` ⌒´ /
ノ \ (なんや元気ないな……)
/´ ヽ
.
396 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:19:25 ID:1v3udkV.0
やる夫が問いかけようとした時、店の表から声がかかった。
<あの、ごめんやす
____
/ \
/ ─ ─ \
/ (●) (●) \
| (__人__) | へえ、
\ ` ⌒´ ,/
/⌒ヽ ー‐ ィヽ 少しお待ちを。
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ / r─--⊃、 |
| ヽ,.イ `二ニニうヽ. |
やる夫は大きく返事をして、店の方へ急ぐ。
.
397 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:19:39 ID:1v3udkV.0
店の入り口に立っていたのは、翠星石の養母、水銀燈だった。
,ォェ、___
,.f込tン:::::::::::` ヽ、
/::::;. -‐ ´ ̄ ̄`丶\
〃::/ \ヽ、
. ll::/ l 、 ヽY _
ll::l} l | l | l lイニ}|
ll;;l} l、 | | l、 -l‐七/v' lミ彳、
. _,'Vi l,x tT二t,|ヽ,ノ,ィT}`'j l ||〃へ.、
/<//l、 ヽヽィf_lj` ¨ ∠ノlノ.|| l ヽ>
ヽ//{∧ \_. __'_, ,ィ′l レ. l
. / //'l | \__<. 、 __`_´.イ,ヽ \,__ l
/ l_| |_! l l l'ー--,<└vヽ \\!
. / ,ィー-.‐| |'′ //lYミヽ|l ハ 、 ヽ:.\
/ /.::::::::::::{ \ーtfノli 斤 l:::::|j\ l:::::::.\
.___
/ \
/ u ノ \
/ u (●) \ お、おいでやす。
| (__人__)|
\ u .` ⌒/
ノ \
内心の戸惑いを隠して、やる夫は低くお辞儀して迎える。
.
398 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:19:54 ID:1v3udkV.0
__,、
, __-,=====〔{〈回ヘ
/_f〆::::::::::::::::::::::弋之ソ::::\
/ jf7::::::::/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \:::::\
/ {i7:::::/ i \:::::ヽ
;′ {|::::/ l i | ヽ:::::
,′ {|:/ l | || | | | | Y|
.| {|| | ||l十¬ | /| | |
.| ゙| | 斤==ミハ || /ト、j | || こちらは小売りはしてはらへんの?
| | | | tしソ リ| /癶〈| | ハ
| | | ヽ \ ̄ '(レリル | ,∧|
\| || \ \ , ` /! |〃ハ_i -─
:::::| l |  ̄ __ _ /|/″/::::::::::::::::...
.厂 ̄\ l l\ イ|l/ーく::::::::::< ̄ ̄
.::.::.\ \ l l:::::::::r‐<ヘ l 〈::.::.::ヽ\::::::::::\
:.::.::.::.\__ ヽ l l::::::::ト\__∧ Y::.::.:l \::::::::::\
____
/ u \
/ / \\ へえ、あい済みまへん。
/ し (○) (○) \
| ∪ (__人__) J | 問屋なもんですさかい。
\ u `⌒´ /
やる夫が申し訳なさそうに断る。
.
399 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:20:11 ID:1v3udkV.0
声を聞きつけたダディが奥から足を引き摺りながら出て来た。
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:| この辺りの小売りは軒並みやられたさかい、
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
. | `-=ニ=- ' .:::::::| お困りなんやろ。
\ `ニニ´ .:::::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、 やる夫、ええからお分けしぃ。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
___
/ \
/ノ \ u. \
/ (●) (●) \
| (__人__) u. | へえ、ほんなら……
\ u.` ⌒´ /
ノ \
/´ ヽ
やる夫が応えて、寒天の棚に足を向ける。
.
400 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:20:27 ID:1v3udkV.0
_ -─ ─- ,- 、
rメ´── 、::::::::::::::`ヽ \
〆 / `ヽ;:::::::::::\ ヽ
// / / / \::::::::::l ',
,イイ | メ、 l ,イ l }_::_} !
_, -ー' /ル| l ァ=ミ、! // | /! //`l|ヾ》 i
// ̄ {| | l ト、ヒソ | /二Zナ | ヾニソヘヽ !
、__}ハヽゝ , `´ r'::ンヽ}/ }| | ヾ\ i
`ヽ:::| ∧ 、 _ `´ / /| | `ヽニゝ おおきに、助かりました。
< ̄:::| |\`__ ,ィ// ハ| | l ',
-=ニ´::::::| l^`}ノ}バ7/ /!_ノ}/l__ ,ィヽ ヽ 寒天が娘の好物で……
/ィ/:l |::/、/l| ∨ / ̄`ヽ::::::∠ __\\
/::::::::l !{/ .ト=/ /::::::::::::::::l:::::::::::<__ヽ ヽ
ヽ:::::::| ハーr'゙Y//:::::::::::::::::::}:::::::::::::::::< ! \
ノ 〉:::| /:::: ̄`/:::::/:::::::::::::/::::::::::::::::::::::::\ ヽ
/ /::::::{ハ::::::::::/::::/::::::::/::::::::{::::::::::: ト、:::::、ー-ゝ ',
/ /:::::::::::∧:::::::ヽ/_/:::/::::::::::::〉、::ト、! | \::〉 l
/ r'::::-::、:/ {:::::::/´::::`ヽ:/ ̄:「、 レ' ! ハ ! !
,'_ノ_::::__::/ ノ:/::::::::::/::::::::::::::| }/| ,' / l | l
lゞ//\〈//:::、__:/:::::::::::::::::::ノ | /! / l ハ /
言いさして水銀燈はふいに口をつぐみ、ダディのことをじっと見つめた。
.
401 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:20:41 ID:1v3udkV.0
-‐,コf7{{辷fリノヘ,
/ __{仏:'/:`¨:^三≧,
/:7://:::::::_:_彡'^¨⌒丶
/ }:厶:/::∠}厂 \ \
/ ____」水くフノ^´ .′ 丶 . 、
/ /::/ 7::/∧:} /, //! . . } l i
/ \V介{:し:ノ |十-Li j/ } ハ|
/ // |:トf |i_」土z,\ ァィ/ / } あの、間違うてたら堪忍だす。
// // i |:| 丶 个i、 炒` '仞/}}j/
‐= _ / 〈/ l |:| `ト . \ 〉i{ {{ けど、旦那さん、去年の火事の後、
 ̄≧=-く 、 八l」 l八 `¨⌒ _, イ八}}=-‐
___,≧ニニニ≧x )\ // ヘ 个ヘL_ ´/厶'′ 天満宮で……
二ニニニニニニニニニニ≧x彡'ヘ 「¨::7了f千{≦=―-
_厶三ニニニニニ>=≦ヘ乙1 |:::/r介ハi| トく,⌒´
_ -=ニ=‐ァ=ニニニニ/::::::::::::::::::\) l⌒レfじヘ |i:::::マ⌒ー ァ
ニ=-_厂/ニニニニ/ ::::::::::::::::::::::::::::ヽ, | 〈∧〉}八:::::\^´
// _,厶イ/ニ>'::::::::::::::::::::::::::::::::::::Vハ八/丁「/f刈〉::::::::〉
言いながら、ダディに近づいていき、顔をまじまじと見つめる。
.
402 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:21:09 ID:1v3udkV.0
_r=ァ=、ィfZァ、,、
, ´fフ:´-=_:三ー_ー^ヘ
/ _r//'_ァ'='^ー'`´` ^ー\
/r=、ソィー'7´ ヽ やっぱりそうや!
ハ L/イ| ヽヽ ', ヽ ',
, ソ/ l ハレ´イ{ { { | ', ハ ', 旦那さん、覚えてはらしまへんか?
//:/ ノj `´i |ムト、ト、 | } リ i !
ハ:{/イ: { 乂yニミ、ヽ ノ メ ノ/ } ! 火事で焼け出された私と娘に、
ヽ._ヽー 、 / // |:. ヽ. { ´ ̄¨` `}イ,ィミxイ / ノ/
 ̄二ニヽヽ/ -ヘ、:.. l:... lト\`' ´ ¨// ./ 懐の巾着ごと渡してくれはりました。
ヽ、_ _-ァ.:´__::.::.::.:ヽ::\ j:〉..:.l:... l! 、_ __′"/´ | / )
_,._-ニ-ァ‐´ィ二;:-- 、::.::..`ヽ、..:∧:.. lト_、 イ.: j| /{ ノ′ 自分も火事でえらい目ぇに
‐ ´/´ /´ ̄´/::.::.::.::.::..‐.-_、::\:.ヽ:.. l::.::::>ー<l!:.:.|:. リ‐//レ
/′ /-‐ァ::´::, ァ::/.::.: ̄:.`ヽト、.V/::}:ハ:{トヽ/!:. !:/‐'::/ 遭うたことがあるさかい、て
/´ /::.:/ノ/..::..::.::.::.::.::.:..:ヽヽヽ=l:| ト='イ-!: /::;∠ イ_
/´ /イj/イ'/.::.::_.::.::.::.::.::.::.::.::.`トi`j:|__ヽ\ノ人::.::.::∠´ 言わはって。
/' イ/ // ノ/:.‐..´...::.......ー ::.::.::.::.::.::.:K/:ハ.「jフス::.:.`:くヽ
/// /イ.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.{_j jァzく::.::..::..`ヽ、
____
/ \
/ ─ ─\
/ (○) (○) \ (なっ!?)
| (__人__) |
/ |!!il|!|!l| /
|ェェェェ|
やる夫は、ぎょっとして主を見る。
.
403 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:21:27 ID:1v3udkV.0
ダディは悪戯がばれた子供のような顔で笑っている。
/\___/ヽ
/ノ⌒'" `'ー-、::::\
. | (●),、(●)、 .:|
| ,. (,、_,、)、_ .::::|
. | {,`ト===イ ,} .::::| さぁて、どうやったかいな?
\ ヾニノ .:::::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、 忘れてしもたなあ。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
____
/ \
/ \
/ \
| \ ,_ | (敵わへん)
/ u ∩ノ ⊃―)/
( \ / _ノ | | (このお人には、敵わへん)
.\ “ /__| |
\ /___ /
熱くなった目頭を押さえて、やる夫はそっと目を伏せた。
.
404 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:21:50 ID:1v3udkV.0
水銀燈はその場に座って土間に手をつき、深々と頭を下げた。
/ ヾ迅 ハ
〃 i | l ノ 川 |♯l i i
l l / i| ! | | // /l|! |♯| | l|
l | / 八トいi //二卞l| |♯| | |l
乂{ |イj芹ミメ,//千干ミ刈 i |/小、 l || /
{ ̄ ̄`ー- 从| ,上ノ 辷ノ^从 / 〈{_儿}〉 ! l| /
ヽ _ l }j ´ "'  ̄``/ //〃lト、 \丶 _ / /
_ -― \ | 八 ヽ /// {{ l|| 》 `ー‐ , ′ ' アシ
l{ { \ ー‐ // / ヾ元く / あのお銭で娘と二人、
__ ヽ ヽ 丶 イ / / l 〃 ヾ、< ̄`/
/ -l i ト-<ハ`V ′ |i〈{ }〉-――- 、 何とか生き延びることが出来ました。
' / / ハl | l | !l |l / \
/ / // / ノi || | 厶イ l l l| ' >'  ̄ ̄丶 いー_ きっとお捜ししてお礼を、と思いながら
{_/ '〈ー-、 | l¦ l/{ヘノ| i リ/ ´ ̄ \ |l l  ̄
〈/\j l l| ハヽ | ¦ / ヽ| l 今日まで過ごして参りました。
ヘ `l | l|| |{ | i / } | i l
/ ⌒ l| l|¦∧ヽ l i / ⌒ヽ 丨 | l この通りでおます、堪忍しとくんなはれ。
. / 乂 iイ|| \j / イ __ -‐____丿 j l |
/ / j从 ヘ ノ / / / \{/ } j从丿
. / / \ ′ // /´ /ト、 ̄ --
' 〃 \ / / f ノ
/ 〃 / / _ノ
_/ ,″ / /-一ニ ̄
.
405 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:22:09 ID:1v3udkV.0
ダディがよたよたと土間へと下りて、手を貸して水銀燈を立たせる。
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:|
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
. | u `-=ニ=- ' .::::::| 止しなはれ、そんなこと。
\ `ニニ´ .u ::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
____
,...-‐:::::::::::::::::::::::::‐-.....、
/::::-‐  ̄ ̄ ̄ ‐- 、:::::::ヽ
//. u l l ヽ::::::`、
.//. l、 l__ . l__/l_ 〉 ト、::lヽ
l l二二lメヽー‐l`、 7l / l 〇〇ヽ せやけど旦那さん、
l l ト l/l ヾヽ、. l V‐レ-、l u l/^` ヽ
l l. l`ヽ-‐ u `、l r'⌒、`l l lヽ ヽ あの時のお礼もまだだすし、
.l 〉`lV`r'⌒、 !l!lll!! ゝ--' l ノl. l l ヽ
l l`ヽヽゝ.-' u ノ/.l ノノ. ヽ ましてやお銭もお返ししてまへんのや。
l l. ヽ\u -‐―‐-、 u.// /::フ、 ヽ
ヾ l、`‐ _ `―一 ´-‐//::::ヽ `v lヽ.ヽ
ヾ_l、lヽ l フ`ニ>' ̄y/::::::::::::ゝ ‐-l 、、`、
`、ニハУ::::::::::〈./::::::::::::__::::〈 >-‐ ' ヾ
l`- .>::::::::::::::::::::::::::::l ヽ:::ヽ l
、二く. /::::/l:::::::::::::::::::::::l. ヽ:::\∠\
.
406 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:22:35 ID:1v3udkV.0
__/ヽ_∠L_
/::::::: ''''\
. |::::::::: (●), |
|:::::::: ,,イ_,`) こっちもよう覚えてへんことやのに、
. |::::::::: ノ.-=ラ
\::::::: `フ 返されても困りますで。
,,.....イ.ヽヽ:: 、 -─'--、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i けんど、そうやなあ……
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
/`ー──一'\
,r(●)(、_, )、(●)\ どうしても、ちゅうなら、
. | '"トニニニ┤'` .:::|
|. | .:::| .::::| 盛大、うちの寒天を
. | ヽ .::::ノ .::::::::|
\ `ニニ´ ..::::::/ 娘はんに買うてもらいまひょ。
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i 確か、そう、きらきーちゃんだしたなあ。
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
____
/ ノ ヽ\
/ (○)}liil{(○)
/ (__人__) ヽ (旦那さん!?)
| |!!il|l| |
\ lェェェl / (覚えてない、言うたのに、
/ ヽ
しヽ ト、ノ 名前言うてしもた!!)
| __ |
!___ノ´ ヽ__丿
.
407 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:22:56 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:|
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::| あんさんを庇う姿が健気でなあ。
. | ´トェェェイ` .::::::|
\ `ニニ´ .:::::/ ほんに、親孝行の娘さんで
,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i 宜しおましたなあ。
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
/;;;;r' ̄´ ` ̄ゝ、;;;;;;;;;;ハヽ
/ソ´ (ヘ;;;;;;;ハ)ハ
//´ / (ヘ;;;;;;;|) ハ
レ' /| ヽヽ ヽ (ヘ;;;;|) ハ
/ / /│ |_\|__|__ (ヘ;|)) ハ へえ、
l / l | | r'| | ハ ` ((!!)) |
| | | 」-ト、ト、 | _x===| }((ト、ヽ | ありがとうさんでございます。
| レ|´| | | ヽ | rテ´ | / ハヽ__」〉|
_| | | | |_==ヾ、 ∨ |/ / {{ ̄ ̄||
〈l ̄〉ハハ \\x゙ , /// / llヾ〉 |||
ヾ_'-'∧. ヽ \\ _ ノ jノ ,イ /| ll |ヾ_ | /
/||ゞ´∧ \_\ゝ /// | {{| | | /;;;
//´|| 〉〉、_ ヽ ̄ヽ、 /イ‐,,/ ゙| | |∧/;;;;;;
// ゙ |_| /\\_|` - -、- < ̄;;;;;/l } /`│_;;;;;;;;;;;
/\ー─-、 / / ̄/| || |;;;;;;;|;;;;;;;;;;;//| |_/;;;;;;;;| ;;;;;;;
娘を褒められて、水銀燈は心底嬉しそうに笑う。
.
408 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:23:11 ID:1v3udkV.0
_-―――- 、._
,-"´ \
/ ヽ
./ ::::::::::::::::::::::::ヽ (嬢さんは……)
| :::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
l :::::::::::::::::::::::::::::::::;l (もう紛れもなく「雪華綺晶」なんや…)
` 、 (__人_) .;/
`ー,、_ /
/ `''ー─‐─''"´\
やる夫は、俯いて唇を固く結ぶのだった。
.
409 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:23:24 ID:1v3udkV.0
┃
┃
┃
┃
┃
┃
・
・
・
:
:
:
|
|
¦
!
410 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:23:40 ID:1v3udkV.0
その夜。
/ ̄ ̄\/ ̄\
/ ̄ ̄ ̄`. \ \
/ 、 、
/ i l
_/ 、 ,イ /
( )_/______ノ__ノ
 ̄ ̄
丁稚部屋で布団に入ったものの、やる夫はなかなか眠れなかった。
.
411 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:23:54 ID:1v3udkV.0
──/ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄\ ̄ ̄ ̄ヽ────
:i ./ ヽ、_ \ i
| (─)(─ ) |
(__人__) |
(`⌒ ´ .u |
.{ | ゴロン
{ ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_________________
×××××××××××××××××
やらない夫も同じらしく、何時に無く、幾度も寝がえりを打っている。
.
412 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:24:08 ID:1v3udkV.0
やる夫は布団の中からやらない夫に声をかける。
____
/ \
/ ─ ― ヽ やらない夫、
/ ( ●) ( ●)'
| (__人__) | 何ぞ悩み事か?
\ ` ⌒´ ,/
/ ー‐ ヽ
/ ̄ ̄\
/ ヽ、_ \
(━)(━ ) .u |
(__人__) |
(`⌒ ´ |
{ |
{ ij ノ
. ヽ ノ
> く
/ l ヽ
/ /l 丶 .l
/ / l } l
/ ̄ーユ¨‐‐- 、_ l !
_/ ` ヽ__ `- ,し´
/ ヽ `ヽー
やらない夫が起き上がる気配がした。
.
413 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:24:22 ID:1v3udkV.0
やらない夫が仕切り戸をわずかに開け、月の光を部屋に入れる。
/ ̄ ̄\
/ \
. | |
. | │ ……やる夫。
| |
. | | 頼みがある。
. ヽ /
ヽ /∩
.> <` }
|. `ヽl
| |ヽノ
____
/― ― \
/(●) (●) \
/ (__人__) \
| ` ⌒´ |
\ /
/ \ 何や。
| ・ ・ )
. | | / /
| | / / |
| | / / |
(YYYヾ Y (YYYヽ |
(___ノ-'-('___)_ノ
やる夫も身体を起こして布団に座った。
.
414 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:24:42 ID:1v3udkV.0
./ ̄ ̄\
./ \
| ー '. `i
| ( ●) .)
|. (__人) 私、鈴三屋に
| `⌒i
ヽ. ノ 養子に行こうと思う。
ヽ ノ
.> <
| |
| |
____
/ノ ヽ、_\
/( ○)}liil{(○)\
/ (__人__) \ ええっ!?
| ヽ |!!il|!|!l| / |
\ |ェェェェ| /
.
415 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:25:05 ID:1v3udkV.0
___
/_ノ ヽ\
/ (○) (○) \ 何でや!?
/ u (__人__) \
| |i!i!i!i!| u | 養子の話が出た三年前ならともかく、
\ u |;;;;;;;;;| /
/ `⌒´ \ もう店も焼けてしもた鈴三屋はんに
(<<<) (>>>)
|、 i、 ,i / 何で今さら養子に行くんや!?
ヽ_/ ヽ__/
| |
/ ̄ ̄\
/ \
| _ノ ヽ、
. | (● ) 、!
| (__ノ_) せやから、や。
. | `⌒ノ
. ヽ }
ヽ ノ
.> <
| |
| |
.
416 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:25:41 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ\ 一人居った丁稚も里に去んだそうや。
| ( ●)(●)|
| (__人__)| 鈴三屋はんには、私はほんまに可愛がってもろうた。
| ` ⌒´)}
| } 私はふた親を早うに亡くしてるさかいに、
ヽ }
ヽ / 一層、それが身に沁みた。
| ''⌒ヽ
| ヽ ヽ
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●)
. | (__人__) 旦那さんやご寮さんが
| ` ⌒´ノ
. | } 何もかも失くさはった今やからこそ、
. ヽ }
ヽ ノ 私はあの人らの養子になりたい、思てる。
.> <
| |
| |
.
417 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:26:04 ID:1v3udkV.0
____
/ノ ヽ、_\ r ⌒j
/( ○). (○)\ / /
/ (__人__) \/ / / )
| u .` ⌒´ / / / /
\ / '` ´ / やらない夫……
r´ (⌒'ー―- イ′ ´廴
/ > 、 ヽ _  ̄ ̄ ̄)
/ -、 } (  ̄¨´
/ ヽ._ __ \
` --‐'´ `゙'
/ ̄ ̄\
/ _⌒ \ それに、や。
| (●)(ー)
| ⌒(_,,人__) ホジホジ もう焼けてしもた店なら、
| ∩ノ |;;;| }
| /_ノ"' } なんぼ商いの苦手な私でも
/ヽ/ / }
( ヽ /_ ノ よう潰さへんからな?
7.ヽ__/ \
.
418 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:26:30 ID:1v3udkV.0
やる夫もやらない夫も朗らかに笑う。
____
/_ノ ヽ_\ わからんで?
/。(⌒) (⌒)。\
/::::::⌒(__人__)⌒::::::\ やらない夫やったら
| ヽr┬-/ |
\ `ー'´ / そのぐらいやりそうや。
/ ̄ ̄\
/ ヽ、_ \
。(⌒)(⌒ )。 |
(__人__) |
(`⌒ ´ | へへっ。
{ |
{ ノ
__∩ ヽ ノ
(ミんゝ、 / ヽ
\ '' /| |
そして、それぞれが互いに気付かれぬよう、手の甲で瞼を拭っていた。
.
419 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:26:44 ID:1v3udkV.0
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420 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:26:55 ID:1v3udkV.0
神無月、吉日。
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ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
 ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
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─────────‐| 井 川 屋.│─────────
:: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
| |;;| ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||: | |;;|
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| ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
| | |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三|| | | |
| | |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三|| | | |
|__|__|/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||_|__|__|_
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421 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:27:15 ID:1v3udkV.0
井川屋の奥座敷で、緊張した面持ちのやらない夫が両手をついてお辞儀をする。
/ ̄ ̄\
/ ヽ、_ \
(●)(● ) |
(__人__) | 旦那さん、番頭はん。
(`⌒ ´ |
. { |─、 長いこと、ほんまおおきに
{ ノ `ヽ
ヽ__ ノ \ ありがとうさんでございました。
/ /\ / / ヽ
/ / / /, ──'' )
⊂ ノ ⊂ ノ(_____ ^⊃
/:.:.:.:.:.:.:./:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:.:.、:.ヽ ,:':.:.:.:.:.:.:.:.:.:/─── ==ミ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
/:.:.:.:.:.:.,:.:./:.:.:l:.:,i:.:.: i: ',:.:.:',:.:.:.:.:.:.',:.:.:ヽ ./:.:.:.:./:.:.: ィ 二二ス__ __ ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:゚,
. /:;:':.:.,:': :/: :.l:.:./l:.ハ:.:.:ト、:',:.:.:',:.:.:.:.:.:.',:.:.:.:.ヽ i:.:.:.:./:.:. / ィ :/ ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:\{:.:.:.:.:.:.:.、_:ム
/イ:.:.:/:.: :i:.:./l:/ !' ヾ:! ヾ!ヽ:.!ヽ:.:.: ::',:.:.:.:.:', /⌒オ:.:./ ,// 'ア:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.《 ` 、
/'/:.:.:.':.:.:.:ハ/. !'__,,..-' ヾ ゝ、__゙:! ヽ:.: :l:.:.:.:.:.l ./ ′/:.:.:' .:/ / /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\:.:.:.{ 、 〉
l:.:.:.:.i:.:.:.:i'´ ̄  ̄`i: :l:.:.:.:.:.l .\/ /}:./ |:| /:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.::.:.:.:.ハ:.:.、 \/
l:.:.:.:.:ヽ: :l __ _ l:.:.!: :i:.:.:l 廴__{:|:.| |:| /:.:.、:.:.:.:.:.:.:. l:.:.:.:.:.:.:ハ:.ヽ. \廴「 ヽ
l:.ハ:',:.:.ヽ! -――- -――- }イ:.:.:l:.:ハ! ./ Y|:.| V イ:._ノV ヽ:.:.:.:.:.:.ト-- :.:.、 \!! \! 冫
!' Ⅵ: :',` i i:.:.:ハ,' ! .廴.| V ィ:.:ハ:.:.| ` \:.:.:.| \/ ィ:|/:.∨ } ∨
{ ミ,:.:', .:| ,':.:/ .} .ハ:.:.| |:.:l V \l / 1:|ヽ:.:.V廴{
、ヽ,:.', :! ,':./ , ′ ./ .-| |:.cっ===ミ z=/ |:.| ∧:.|:厂ヽ
\ゝ', ,':/メ / | ト:.:| ////////{ |:.l":.:.:リ:{
ヾ:.、 ー ―― イイ/ {/:iハ ,l:i:込、 _`__ ヽ. イ|/:.:.:./:/ i
ヾ:i 、  ̄ イ:/ .' .|i:// ゝ.イi:i:i:}:.父ト. ゝ __.ノ イ∧ ハ:./:/ :|
:l ヽ / l:' ./|i≧=彡:i:i:i:/Y:.:.:!\≧ー一 .イ:.∧ マヘ ¦
,-┤ `ー-' ├-、 .圦i:i:i:i:i:i:i:i:イ |:Ⅵ: |  ̄ ̄ j:.:/∧ /i:i∧ |
/ ゝ、 才 ヽ {  ̄ ̄ :|: : : :|ニニニニ.ィ|/: {// イ:i:i:i:i:i}ヽ !
_,-'´i `ヽ ,-‐' iヽ、_ i、 :|i : : :| |: : :マi:i:i:i:i:i:i:i:/ 、 ヽ
やらない夫の左右では、鈴三屋夫妻が笑みを浮かべて座っていた。
.
422 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:27:33 ID:1v3udkV.0
ダディが傍らのいく夫に苦笑する。
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:| +
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::| 何や、嫁に出すみたいやなあ。
. | ´トェェェイ` .::::::| +
\ |,r-r-| .::::/ +
,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、. /^)
: | '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(
| \/゙(__)\,| i |´⌒ )二 ト、
_____
/.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
|.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
|::::::::ゝ \ / |
|::::::( ( >) (<)|
(@ ::::⌒(__人__)⌒) ほんまだすなあ。
| |r┬-| |
\ `ー'´/
,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ
| \/゙(__)\,| i
.
423 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:27:59 ID:1v3udkV.0
鈴三屋は涙声で礼を言う。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::. ::::::::::. :::::::::. ヽ .::/ / ト、 \
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::. :::::::. k/l / .| .)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::. ::::. ノl |/ .:: l /l
-,,_::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: .::::::::::::. .l/ .}:::. .: }ト:| // やらない夫のお陰で、
''''--,=,,,,,_::::::::::::::::::___:::=-=''" l ,,/|::,-.,/::... / }
"''''-<=/_ /  ̄ ̄''''" ./,,,,,|--='''|" .レ,- |:::::::::::.. / / 私もこれも生きる張り合いが生まれました。
:::::::::;//::::/=,,,,,/,,,,,,=-''/:::::/l:::::: l::: .ト::/ )::::::::::::::./ /l
:::/,,,/:::/|::::::::::::::: /l:::::/,,,|:::: /::: .|:/./:::::::::/" ./ | お許し頂いた井川屋はんには…
/_: : |::./、|::::::/::::: ./-|:/": ::|::/:|:::: .|.|_./:::,::::// / l
""''-|/、:|:::/|::::: , .//,-l-'''''"l/"'|:: l.|::::::/-":::::: ノ } ほんま…何とお礼を言うてええのか……
:::::::::::::": :l/:::l:: /l/: : :::::::::::::::::::" l:..//:::/l::::::::::: / /"
: : : : : : : : : ::|:/: : : : : : : : : |/:':::(::::::::: / //
: : : : : : : : : : :l: : : : : : : /l::::/^l::::::::..:: ....::/ l
: : : : : : : : : :::::l: : : : : /:::/へ::::::::.. .|
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ___ ヽ、
/::::::::::::::/ ̄/:::::::::::::/,、<゛´:::::::::::::::::::``>、, ヘ
/:::::::::::/ .//:::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::\ヘ
/::::::::/ / /:::::::::::::/::::::::::::::::::/::::/:::::::::::::::::::}:::::::::ヾ,
/:::::::〈 ./ /:::::::::::::/::::::>''::/}::::::/:::::::::::::::::::/::::::::::::ヘi
/:::::::::::::〉、/ i:::::::::::::::{>''/:/-:7一/!::::::::::::::::::/:::::::::::::::::|i!
/::::::::::::/ ゝ、ィ::::::::::::才><., /::/ j:::::::::iト、:/|:::::::::::::::::::|:!
'::::::::::::/ イ ,イ::::::::::::::と癶.,,,ソヘ´ /:::://:::/ ト::::/::::::::::::|::
i:::::::::::/ // ;::|:::::::::::::○ `\\ムイ .// |::::/:::::::::::::::|::i
|::/|::/ // /:::|:::::::::::::io \\\\\≠ォz:、':::/::::::::/:::::/:::|
|/ |〈 // /:::::|:::::::::::::| \\\\\\`ー-'つ/:::::/:::::/::::::|
| |ハ``:/___/:::::::|::::::::i|:::| \\\\\\\ О:://::::::::/.∨:::}
___|__}:::ハ::::i|:::::::|::::::::||:::! r ‐- 、 _\\\ o:::/:::::::::::::/ |. ∨,'
\\∨゙''弋{∨:::|:::::::| |::! `¨ ‐- ア .ノ::::/:::::::::::::/ | V
\\  ̄∨:::| .|i \ ,.、<:::::/:::::::::::::/ |//
\\ V|ー--ミ>- ''"゙´::::::::::::::/::::::::::/ー-|:::/
\\ \ ``ヘ\:::/|:::::;イ:::::::/::| |i. ∨
\\ \二二∧ \ }//::://:::/| |:| ヘ
\\ \ ヘ. \,'/ .// | | | ヘ
ご寮さんは手をついたまま肩を震わせていた。
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424 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:28:14 ID:1v3udkV.0
/ ̄ ̄\
/ _,ノ `⌒
| .( ⌒)(⌒)
. | (___人__)
| ノ
.| |
人、 |
,イ:. ト、ヽ、 __ ,_ ノ
,. -ーー -‐ ´:::::::::::::::::::::::::::::7
/..::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: メ、
{ :::::::::::::::::::::.ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::.. 、_
| ::::::::::::::::::::::..`、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::..`ヽ
/: : : : : : : :/: : : /: : ,ィ: /l: : : l: : |: : : : : : ::ヽ /:.:.:.:.:.:.:.:/:.:./ -──=ミ:.:\
;´: : : : : : : /: : /|/ .|/ .!: : /i: : !: l: : : : : :丶 .':.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.://:/:.:.:.:.:.:.}:.:.:.:.、\:.ヽ
.i: : : : :|: : : : |/ |/ | /|: :|: : i: : : :゙ヽ ./:.:. ──ォ':.:.:.: イ:.:.: |:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:}:.}:.:.ヽ:.:.
i: : : : ::i: : : ::/ ´ ̄ ̄ ̄`'''' ´ ヽ|: : | .|: :丶 .':.:.:{_/--1:.:.:/:.{:.:.:.:.!:.:.:.:./:i:.:.:.:/:.ム:.:.:.}:.:.:.
|: : : :,-リ: : : | "疋;:ソ` '`'-、_.i: : |: |:. ./:.:./く イ:.:. 1:.ハ:._:.:l:.:.:./ l:.:.イ:./ }:.:./:.:.:.:!
.|: : :/-、',: : | , f:テリ` /: : |: i丶 .,':/.ィ:.:./∨:|:.:.:l:|:.| l:.:.「}:.メ、 l/ l:/ i:.:ハ:.:!:. |
.ソ、::l,.( _ リ、:| l .` /l: :/| i .:./ /:.:.:.:/ /:.: |:.:.从:{ |:/ ′ / / z=!ィ: |:.|:.:.|
,|::\__ ヽ| , //|/ |/ .':.Ⅳ:.:.:.:/ /: レ|:.:.:.|ハ x===ミ 、 |:l:.:|:.|:.:.|
リl: ::| | ′ // /:i:.|:.:.:.:.〈 /:.:.:{ |:.:.:.| __' 从:.|:.川{
l::|リ ヽ ` ― - 、 // .':.: |:.|:.:.:.:.:i:.:.:.:.人_|:.:.:.| 「 ̄У イ:.:..:.jイ:ソ
,リ `、 `" /リ . {:/ 从:.:.:.:.l:.:.:/:./|:.:.:.ト . 乂./〃:.l:.:..:.′
,----亠--- 、_`.、 / 彡 ゝ ):.\:.:!:.:/: :人:.: ! イi: 「|:.:/{
// ̄ ̄⌒`ヽ` \::`::-、,_, ´. Ⅵ ソ:イ : : : : : \〉、 ∧{: : : Ⅵ: リイ i
,- ゙´  ̄ ̄>-、_ \::::`::`-y. rく: :i:i:iト、: : : : : : \ { V: : : i: | ハ
/::/ ∥ ./":::::::::::\ \::::z[]. /⌒ヽ: : i:i:iト、: : : : : : \ /!: : : i: | , ∧
/::::::| ∥ /::::::::::::::::::::.ヽ `、::{|. / \: : i:i:iト、: : : : : : }「/!: : : i: | / \
やらない夫は、新しいふた親と肩を並べて井川屋を出ていった。
.
425 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:28:31 ID:1v3udkV.0
ダディ、いく夫、やる夫と、新しく雇い入れた女衆でそれを見送る。
_____
/\___/ヽ /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
/'''''' '''''':::::::\ |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
. |(●), 、(●)、.:| .|::::::::/ ⌒ ⌒ |
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::| |:::::::〉 ( ●) (●)|
. | ´トェェェイ` .::::::| (@ ::::⌒(__人__)⌒)
\ `ニニ´ .:::::/ | |r┬-| |
,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、 \ `ー'´ /
: | '; \_____ ノ.| ヽ i ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
| \/゙(__)\,| i | : | '; \_____ ノ.| ヽ i
> ヽ. ハ | || | \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
/) , ⌒ハ ハ⌒ 、
///) j:::::::::ヽ ,ヘ^ ⌒ Y ⌒ヽ/ .::::::::i
/,.=゙''"/ ノ:::::::::j(ノ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i
/ i f ,.r='"-‐'つ____ ル:::::リγ::..:::::..:::...ヘ、: : : :: ノy:::::::リ
/ / _,.-‐'~/⌒ ⌒\ Yyノ ノ :ノ...:ノ ノ ヽ ::::::) ルリノ
/ ,i ,二ニ⊃( >). (<)\ .リ::::::( ( ●) (●::(
/ ノ il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \ ハ::::ハ ,, r‐ァ リ) )
,イ「ト、 ,!,!| |r┬-| | .) ) )、  ̄ノくハ(
/ iトヾヽ_/ィ"\ `ー'´ / .(,(.( ' ヘ い ノ:::))
ノ/)` ヾ ソ ̄(( 、
,' ノ Y Y
l: ( ...... ..... i
lヾ. .. :::::::: ::::: .ノ
.
426 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:28:48 ID:1v3udkV.0
井川屋を去っていくやらない夫。
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
./ ヽ
.l l
l l
.l l
ヽ l
ヽ l
.) __,,../
/===、_〈
/ \
/ ヽ
.i 、 . l
.l i l l
l .l l l
l l . l l
l l . l l
l .l 、 .ヽ
ヽ .l ヽ ヽ
___
/ \
/ \ , , /\
/ (●) (●) \
| (__人__) | (私も……)
\ ` ⌒ ´ ,/
ノ \ (やる、やるで、やらない夫!)
/´ _i⌒i⌒i⌒i┐ ヽ
| l ( l / / / l
l l ヽ /
その背中を見ながら、やる夫は強く拳を握った。
.
428 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:29:00 ID:1v3udkV.0
┃
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:
:
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429 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:29:13 ID:1v3udkV.0
やらない夫が去って、数日が過ぎた夜。
===================================================;;;|..│
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
 ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@==
─────────‐| 井 川 屋.│─────────
:: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
| |;;| ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||: | |;;|
| |;;| ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||: | |;;|
| |;;| ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||: | |;;|
| |;;| ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||: | |;;|
| |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|:::::
| ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
| | |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三|| | | |
| | |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三|| | | |
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430 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:29:26 ID:1v3udkV.0
____
/\ /\
/(●) (●) \
/ (__人__) \
| ` ⌒´ |
\ /
/ \
| ・ ・ ) 旦那さん、番頭はん。
. | | / /
| | / / |
| | / / |
(YYYヾ Y (YYYヽ |
(___ノ-'-('___)_ノ
やる夫は、ダディといく夫の前に手をついて座った。
.
431 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:29:41 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(●), 、(●)、.:|
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
. | `-=ニ=- ' .:::::::| 何や、やる夫。
\ `ニニ´ .:::::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、 また改まって。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
____
/ \
/ \ /\ へえ。
/ ( ●) ( ●)ヽ
l ⌒(__人__)⌒ | お二人にご相談したいことがおます。
\ ` ⌒´ /
/ ヽ
.
432 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:29:57 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/'''''' '''''':::::::\
. |(○), 、(○)、.:|
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
. | ,rエエェ、 .::::::|
\ ヽr-rヲ .:::::/ 何、相談?
,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
_____
.. /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
.. |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
.. |:::::::::/ ._ノ ヽ ..|
|:::::::〉 ( ○) (○)| よもやお前はんまで
. (@ ::::⌒(__人__)⌒)
| u |r┬-| | 何処ぞへ養子に行きたい、とでも
\ `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、. 言い出すのと違いますやろな?
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
.
433 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:30:17 ID:1v3udkV.0
やる夫は一気に声を絞り出した。
/ ⌒`"'⌒`ヽ、
/,, / ̄ ̄ ̄ ̄\
/,//:: \ 原村に行くお許しを頂きとうおます。
;/⌒'":::.. |⌒ヽ
/ /、:::::... /ヽ_ \
__( ⌒ー-ィ⌒ヽ、 /⌒`ー'⌒ )
━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"
_____
/\___/ヽ ../.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
/ ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\ |.::::γ⌒Y´⌒ヽ:::::::|
. |(●),. 、(●)、.:| |::::/ \::::::::/ u.|::::|
| ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::| .|:::〉(ο)::(ο) 〈::::|
. |u (^ー^> 。.::::| .(@⌒(__人__)⌒ @)
\ ゚ ⌒´ u .:::/ | .u |r┬-| u |
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、. \ `⌒ ´ /
/´⌒ヾ `ー
主と番頭、二人同時に息を飲むのがわかった。
.
434 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:30:34 ID:1v3udkV.0
やる夫は板敷に額を擦り付ける。
/ ⌒`"'⌒`ヽ、
/,, / ̄ ̄ ̄ ̄\
/,//:: \
;/⌒'":::.. |⌒ヽ お頼もうします。
/ /、:::::... /ヽ_ \
__( ⌒ー-ィ⌒ヽ、 /⌒`ー'⌒ )
━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"
/\___/ヽ
/ -‐' 'ー- \
| (●),(、_,)、(●) :::|
| /,.ー-‐、i :::::|
| //⌒ヽヽ .::| ええ加減にしなはれ!
| ヽー-‐ノ :::::|
\  ̄ ...::/
/`ー‐--‐‐―´\
珍しくダディが声を荒げた。
.
435 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:30:58 ID:1v3udkV.0
/\___/ヽ
/ ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
. |(○), 、(○)、 :|
| ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|
. |.u (^・^> 。.:::::::| もう充分のはずや。
\ ゚ ⌒´ u .::::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、 お前はん、一体何を考えてる。
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
_____
/.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
|.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
|::::::::/ \:三::/i:::| 旦那さんの言わはる通りや。
|:::::::〉( ○)::( ○).|
.(@ ::::::⌒(__人__)⌒) やる夫、お前はんの留守の間に、
| u |i|!i|!| |
\ `⌒´ ,/ またこの夏のような大火に巻き込まれたら、
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i どないするんだす。
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
.
436 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:31:19 ID:1v3udkV.0
/ ⌒`"'⌒`ヽ、
/,, / ̄ ̄ ̄ ̄\ 旦那さん、番頭はん、
/,//:: \
;/⌒'":::.. |⌒ヽ どうぞ堪忍してください。
/ /、:::::... /ヽ_ \
__( ⌒ー-ィ⌒ヽ、 /⌒`ー'⌒ ) それでも私は、原村に行きとおます。
━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"
_____
.. /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
.. |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
.. |:::::::::/ ._ノ ヽ ..|
|:::::::〉 ( ○) (○)|
. (@ ::::⌒(__人__)⌒) やる夫……
| u |r┬-| |
\ `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
.
437 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:31:36 ID:1v3udkV.0
一度は諦めかけた道だった。
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
/ノ ヽ、_ ヽ
( ●)( ●) |
| { .! ) |.
|. ¨´ `¨´ l.
. | /.
| /
\__ (
_)_ ===\
/ \
/ ヽ
| , i ___
| | l.| / \
| l | | / \ , , / \
| |. |. l / (●) (●) \
l | |.│ | (__人__) |
/ ノ | | \ ` ⌒ ´ ,/
/ / l / ノ \
(ヽ、__,/____ __,У _i⌒i⌒i⌒i┐ ヽ
ヽ_ィ __ __ ̄ ̄_ ̄_,| ( l l l l l
¦ ¦ ¦ j l | ヽ /
しかし、身代を失った鈴三屋へ養子に入ったやらない夫の意気に、目を開かれる思いがした。
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438 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:32:00 ID:1v3udkV.0
___
/ \
/ \ (今、ここで諦めるわけにはいかへん)
/ \ , , / \
| (ー) (ー) | (井川屋のため、亡うならはった翠家の旦那さんのため、
\ u. (__人__) ,/
ノ ` ⌒´ \ 辛い思いをしはった嬢さんのため、それに私自身のためにも、
/´ _i⌒i⌒i⌒i┐ ヽ
| l ( l / / / l 諦めることは出来ひん!)
l l ヽ /
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439 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:32:15 ID:1v3udkV.0
/ ⌒`"'⌒`ヽ、
/,, / ̄ ̄ ̄ ̄\
/,//:: \ どうか…どうかお許しを!
;/⌒'":::.. |⌒ヽ
/ /、:::::... /ヽ_ \
__( ⌒ー-ィ⌒ヽ、 /⌒`ー'⌒ )
━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"
/\___/ヽ
/ ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
. |(○), 、(○)、 :|
| ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::| 私は許さへん。
. |.u (^・^> 。.:::::::|
\ ゚ ⌒´ u .::::/ どうあっても許しまへんで!
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
厳しい口調で言い捨てて、ダディは痛む足を引き摺りながら奥へと向かった。
.
440 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:32:33 ID:1v3udkV.0
慌てていく夫もダディを追う。
_____
.. /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
.. |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
.. |:::::::::/ ._ノ ヽ ..| だ、旦那さん!
|:::::::〉 ( ○) (○)|
. (@ ::::⌒(__人__)⌒)
| u |r┬-| | やる夫、
\ `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、. 早う旦那さんにお詫びに行きなはれ!
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
> ヽ. ハ | ||
/ ⌒`"'⌒`ヽ、
/,, / ̄ ̄ ̄ ̄\
/,//:: \ …………
;/⌒'":::.. |⌒ヽ
/ /、:::::... /ヽ_ \
__( ⌒ー-ィ⌒ヽ、 /⌒`ー'⌒ )
━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"
やる夫は板敷に額を押しつけたまま、動こうとしなかった。
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441 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:32:57 ID:1v3udkV.0
翌日、まだ夜が明けきらぬうちに、やる夫はそっと店を出た。
____
/ \
/ \
/ \ (旦那さん、番頭はん……)
| \ ,_ |
/ u ∩ノ ⊃―)/ (ほんまにすんまへん…………)
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
自分をおいて他に若い男の奉公人の居ない井川屋。
七十四歳と五十九歳の二人を残して行くことは心底辛く、
申し訳のなさに胃の腑が捻じれる思いだった。
.
442 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:33:15 ID:1v3udkV.0
やる夫は店に向かって深く一礼すると、迷いを振り切るように駆け出した。
./ ̄ ̄ ̄\
/ \ / \
./ (●) (●) \
| U (__人__) |
/ ̄ヽ\ `⌒´ / ,.r-、
/ ⌒\ P{三)
/ヽ/^y /\ \/\ノ
(、、J | / ヽ / /
/ / \___/
从从 ( /
Σ ヽ、 へ \
Σ /  ̄ \ \
Σ_ノ \、__ / \ ヽ
\ 〉
/ /
/ /
/ /
\二フ
胸の中で天満宮に手を合わせながら、ひたすらに前を目指した。
.
443 名前: ◆8epcM/V4rs[] 投稿日:2014/04/12(土) 11:33:28 ID:1v3udkV.0
_________|\
[|[|| 次章へと続く… >
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/
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444 名前: ◆8epcM/V4rs[sage] 投稿日:2014/04/12(土) 11:34:47 ID:1v3udkV.0
本日の投下は以上です。
次章は月末の投下となります。
予告した刻限に投下できなかったこと、重ねてお詫び申し上げます。
446 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2014/04/12(土) 11:39:04 ID:c50grKgY0
乙!
448 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2014/04/12(土) 12:34:40 ID:kwsXLOWw0
乙でした!
449 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2014/04/12(土) 13:34:24 ID:ELesFskc0
乙でした
成功するといいなあ
名前:[{{comment.comment_mail}}] 投稿日:{{comment.comment_date}}ID:{{comment.comment_user_id}}